<リカイってなに?>性告白の先に(1)同性愛者の弁護士・南和行さん

2022/01/15 05:30

南和行弁護士

■自己決定、尊重されるべき 関連ニュース 「性的少数者は病気じゃない」シンガポール 禁止条項撤廃を経て理解深める定例イベント 唯一無二の「夫婦」、「夫」は女性になれるのか 「体にメス」は違憲でも、迫られる離婚 【同性婚訴訟】続く違憲、司法の共通見解 法改正、国は慎重姿勢

 兵庫県尼崎市保健所に勤めていた性的少数者の30代男性が、上司から「公務中のカミングアウトは控えるべき」と指導され、組織に失望して依願退職した。浮かび上がってきた論点について、同性愛者である南和行弁護士に聞いた。(聞き手・山岸洋介)
     ◆
 -性的指向や性自認を明かす「カミングアウト」をどう考えればいいか。
 「まず、カミングアウトするかどうかは本人の自由。これは当然のことだ。性のことにとどまらず、自分自身の情報や属性について誰に知らせるか、知らせないかは、その本人だけが決めること。自己決定だ」
 -元職員の男性は保健所の幹部からとがめられた。
 「元職員は、市民から結婚観について何度も聞かれたため、話を終わらせたくて性的指向を答えたと報じられている。どういう動機であれ、誰かに『自分はこういう人間』と明かしたことに対し、それを非難したり、加害行為のように言ったりするのは許されない」
 -幹部は「カミングアウトによって不快な思いをした」という市民側の訴えを理由にしていた。
 「カミングアウトを加害行為であるかのように捉えている。元職員こそ被害者なのに『もっと世間の顔色をうかがえ。我慢するのはお前の方だ』とでも言うような対応は正当化されないし、カミングアウトの意味をはき違えている」
 -カミングアウトすれば、相手との関係が変化するリスクがある。
 「カミングアウトするということは、自分が相手とどんな関係を築くか、あるいは集団内で自分をどんな人物として位置付けるかという問題。相手と親密になるため、集団内で居場所をつくるために明かすこともあるだろう。逆に相手と距離を取るため、嫌われるためにカミングアウトするのも、当然あるべき選択肢だ」
 -カミングアウトされて戸惑う人がいる。
 「他人を既に知っているカテゴリーで定義し、理解したつもりになっているから、思いがけない告白に当惑する。受け止める側の未熟さ、想像力の欠如が問題なのであり、カミングアウトした側の責任ではない」
 「大切にしたい関係や居場所だからこそ、自分のことを知ってほしいというのは、自然な感覚だ。多数者は『言うまでもなく当然』だから言わないわけで、少数者は『言わなきゃ分かってくれない』から言う。それは尊重されるべきだ」

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