留学生のコンビニ店員 高齢男性に声かけ、特殊詐欺被害防ぐ「学んだ日本語で人の役に立てたことがうれしい」

2022/03/16 05:30

署長感謝状を受け取ったグエン・リエンさん(中央)と店長の岡田章良さん(右)=甲子園署

 高齢男性に声をかけて特殊詐欺被害を未然に防いだとして、兵庫県警甲子園署はセブン-イレブン甲子園浦風町店のアルバイトでベトナム人留学生のグエン・リエンさん(28)に署長感謝状を贈った。来日してもうすぐ10年になり、今春で県内の大学院を修了する。「勉強してきた日本語で人の役に立てたことがうれしい」と語った。 関連ニュース 「50億円当選」詐欺と納得せぬ男性、警官と説得続け入金防ぐ コンビニで仮想通貨を求める高齢者 事情を聴くと「26億円プレゼント」 火災を発見し「誰かいますか」下校中の中学生3人が安否確認、消火に協力 被害を最小限にとどめる

 2月5日正午ごろ、レジには大勢の人が並び、リエンさんが商品の袋詰めを手伝っていると、80代の男性が現れた。
 「これがほしいのだけど…」「買い方を教えてほしい」。指さしたのは電子マネー。4万円分の「グーグルプレイギフトカード」を差し出し「まとめ買いをしたい」と言う。このカードはレジを通さないと使えない。
 買い方を知っている人は、1500円、3千円のように決まった額を指定するのに…。不審に思ったリエンさんはとっさに声をかけた。
 「何のために使いますか?」。すると男性は答えたという。「自分のためには使わない」
 これは詐欺だ-。レジの横にあったボタンを押して店長を呼び、速やかに110番をして被害を未然に防ぐことができた。
 コンビニ店では、他にもネパールやスリランカなどの留学生が10人ほど働き「怪しいと思ったらすぐに店長に相談する」と普段から決めていたという。
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 リエンさんは、ベトナムにいる父親が生け花や盆栽が好きだった影響で、幼い頃から日本に関心があったという。2013年ごろに来日して2年半ほど日本語学校に通った後、県内の大学から大学院へと進んだ。
 コンビニ店でのアルバイトは「接客を通して語学を学びたい」と来日間もなくして始めた。当初は漢字や敬語の使い方が難しくて苦労しながらも、今回、被害防止に役立てたことに上達の手応えも得た。
 10年近く過ごす中で「日本人は異国の人にも優しくて思いやりがある」と感じてきた。大学院を修了後も日本で働くことを決めた。
 「今回は偶然もあったけれど、これからも人の役に立てるように頑張りたい」と笑顔を見せた。(浮田志保)

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