一度は忘れられた大正期の前衛美術家・渋谷修 「1万点近い」という広告マッチラベルから読み解く魅力
2022/06/18 05:30
渋谷修デザインのマッチラベル(同書より)
大正時代の前衛美術家・渋谷修(1900~64年)がデザインした広告マッチのラベルを取り上げた研究書「渋谷修 Zコレクション相関図」を、兵庫県西宮市の市道(いちみち)和豊さん(72)が出版した。
関連ニュース
ひょうご本大賞に「あの日、小林書店で。」 尼崎の小さな本屋巡る小説
阪神タイガース、2軍施設オープンへ「マジック」点灯 100日前で尼崎の商店街 尼崎→西宮→尼崎「お帰り」
<ヒロシマ・ナガサキ 今こそ伝えたい 県内被爆者インタビュー>(12)葛下友和さん(98)三田市 体験向き合えるまで半世紀
渋谷は石川・能登出身。上京後、「未来派美術協会」や「マヴォ」などの団体で活躍した。25~29年は関西で趣味人向けに絵はがきや蔵書票を手掛けたが、戦後は忘れられていた。
市道さんは渋谷の作品に魅せられ、20年ほど前から資料を収集。マッチラベルも渋谷自身の記録用とみられる貼り込み帳を入手し、探索の網を広げてきた。
「Zコレクション」と名付けた、約1500種類の貼り込み帳もその一つ。市道さんによると、渋谷が下絵を手掛けていた大阪の「土井マッチ」の社内用で、「本庄ファウンテン」「ハナヤ食堂」など神戸の店のラベルも少なくない。
他に入手した貼り込み帳も、土井マッチの経営者や渋谷の版画家仲間の旧蔵品と断定。それぞれに含まれる渋谷のラベルを突き合わせながら、コレクションの成り立ちを跡づけている。
現時点で総数は「1万点近いのでは」と市道さん。「戦後のラベルにも、それらしい作風のものがある。縁あって手元に集まれば、研究したい」と話す。
B5判80ページ、2千円。(田中真治)