建て替えに伐採したクスノキ、新庁舎の新たなシンボルに 伊丹市役所、ゆかりの彫刻家ら椅子やアート作品に
2022/09/28 05:30
隈研吾さんがデザインし、棚田康司さん(右)、三沢厚彦さん(左)が手がけたクスノキの椅子=伊丹市宮ノ前2、市立伊丹ミュージアム
伊丹市役所新庁舎(兵庫県伊丹市千僧1)に、建て替えによって伐採されたクスノキを利活用した彫刻と椅子が展示・設置される。クスノキは阪神・淡路大震災の爪痕を残し、伊丹にゆかりのある彫刻家らが半世紀の息づかいを感じながら生まれ変わらせた。11月28日の新庁舎開庁を前に、市立伊丹ミュージアム(同市宮ノ前2)で展示会「建築と彫刻の交差展」が開かれている。(久保田麻依子)
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クスノキは市の木に認定されており、建て替え前は庁舎周辺に約30本が植わっていた。国道沿いに立つ1本をシンボルツリーとして残し、一部は市内の公園などに移植。状態の良い11本を彫刻品として活用した。
彫刻を担当したのは、いずれも市立美術館(現・伊丹ミュージアム)で個展経験がある現代彫刻家の三沢厚彦さんと棚田康司さん。
新庁舎のロビーに設置される椅子は2人が1本の丸太を彫り上げた。これは、新庁舎の設計に携わった建築家の隈(くま)研吾さんがデザインし、クスノキの変色した部分が芸術性を帯びた模様のように仕立てられている。
伐採したクスノキの年輪を数えると、阪神・淡路の地震の衝撃で水脈が変化したとみられる。1本の木でも軟硬が混在するというまれな性質を持ち、通常では見られない茶色い変色があるという。
また、2人は市民フロアや市長室などに設置される展示物を、3作ずつ手がけた。三沢さんは動物彫刻の「ANIMALS(アニマルズ)」シリーズで知られ、遠くを見つめるように堂々と立つ白いクマやイヌを仕上げてこう話す。「建築とアートが融合し、未来を見据えた作品を手がけることができて誇りに思う」
一方、棚田さんは神秘的な女性像で知られ、今回は「歴史」に着目して制作。伊丹産の桜が明治期に米国で植樹されたという歴史を踏まえ、市民から提供された衣服のボタンを使って「桜」をイメージさせる首飾りの少女像を手がけると「市民が大切にしてきたクスノキが形を変えて100年後も愛されるシンボルになればうれしい」と話した。
11月6日まで。一般500円、高校、大学生300円。午前10時~午後6時。月曜休館。伊丹ミュージアムTEL072・772・5959