暴力団「不当要求」の闇…実話から笑いも交えて「寸劇」に 伊丹署署員の男女7人、熱演で注意呼びかけ

2022/10/23 05:30

不当要求で得た金を確認する組員役(右)とクレーマー役の警察官=伊丹アイフォニックホール

 暴力団の不当要求を具体的にイメージしてもらおうと、兵庫県警伊丹署は署員ら男女7人が出演する寸劇を完成させた。飲食店主と工場事務員が狙われる過程を再現し、時にはユニークなやりとりで観客を笑わせる。暴力団事務所は今年9月に同県尼崎市内でなくなって阪神間6市1町ではゼロになったが、組関係者はひそかに活動を続けているとして注意喚起のメッセージを込めた。(池田大介) 関連ニュース 【写真】クレーマーの女を取り押さえる バッグに詰まった凶器「好きなん使え」 豹変した“オヤジ”、半グレが震え上がった夜 「もう時代が許さない」 黙認70年、尼崎・売春街解体の舞台裏


■用心棒をかたって
 寸劇は3年ぶりにあった伊丹市の防犯イベントで約200人に初披露した。組員が、あるスナック店に入ってくる場面から始まる。
 組員「ここの店のモリはどこがしょんや!」
 女性店主「???…昆陽池に森はありますが…」
 組員「その森ちゃうわ! 『モリ』いうたら『用心棒』のことや」
 県警によると、2021年末の県内の暴力団構成員や準構成員は前年比80人減の計約690人。17年には神戸・三宮地区の飲食店など約150店から過去10年間に用心棒代名目で計2億円超が暴力団に流れていた疑いが判明している。
 「うちの組がバックについたる。その代わり、月々の会費は払ってもらうで」。組員がそう言って立ち去ると、店主は独りごちた。
 「うちの旦那も頼りないし…どうしようかなぁ…」
■クレーマーを装って
 場面は変わって、とある工場。大柄の男性警察官がクリーニング店員を名乗る女に扮(ふん)して現れ、女性工場事務員にまくしたてる。
 女「工場の煙で洗濯物が汚れてもたわ。クリーニング代どうしてくれんの」
 事務員「まず確認を…」
 すると女は「わしがうそついてる言うんか!」とすごんだ後、すかさず態度を変えて「じゃあ、せめて、タクシー代だけでも払ってね」と猫なで声で迫った。
 事務員は、渋々と現金を手渡すことにした。
 県警によると、悪質なクレームによって業務に支障が出た場合には、不退去罪や威力業務妨害罪などを適用できる可能性がある。
 しかも寸劇では、このクレーマーの女は、冒頭の組員の仲間だったという設定。組員の不当要求を助けた者は、暴対法に基づく中止命令の対象となり、従わない場合は逮捕できる。
■まずは相談を
 再び場面は転じ、クレーマーの女と組員が薄ら笑いをして部屋で語り合う。「あいつら、ちょっと言うただけで、こんなに出しよったわ。あほや、あほや」
 そこに警察官3人が登場。物語の伏線として、スナック店側と工場側から相談を受けた警察は、こう助言していたのだ。
 「次に来たら、スマホなどで撮影して証拠を残すようにしてください」
 警察官は証拠動画があると告げると、抵抗されてもみあう。伊丹署の福田和雄署長(59)が組員役の手首をつかみ、「これにて一件落着」と締めくくった。
 寸劇は6分程度。福田署長は「事務所はなくなっても、警戒を怠らないでほしい」。組員役で出演した沼田哲臣警部補(45)は「あらすじは実話を基に考えた。不当要求があればすぐ連絡してほしい」と話した。

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