<尼崎駅前情話1>JR猪名寺 「万葉の森」で忍術訓練
2022/10/30 13:30
佐璞丘公園で忍術の訓練に励む子どもたち=尼崎市猪名寺1
兵庫県尼崎市内にある各駅を起点に記者が街を歩き、人々との触れ合いや見どころを紹介します。
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※主に週末に掲載します。(2016年1月の連載から=年齢、肩書は当時)
■JR猪名寺(いなでら)「万葉の森」で忍術訓練
「有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」
紫式部の娘・大弐三位(だいにのさんみ)が詠んだこの歌は百人一首に登場する。
「猪名の笹原」
千年以上前、猪名寺駅北東から伊丹市にかけての一帯は「猪名野」と呼ばれ、笹の原野が風にそよぐ風情が、万葉集など数多くの和歌に収められた。
黄金瓦が埋蔵されたとの言い伝えが残る東リ工場敷地内の黄金塚古墳(伊丹市東有岡5)や笹原稲荷(同)、南には戦国武将・荒木村重と織田信長の合戦で焼失したとされる猪名寺廃寺跡(尼崎市猪名寺1)がある。
住民らが「万葉の森」と呼ぶ佐璞丘(さぼくがおか)公園に足を踏み入れる。
総面積200アール。エノキやムクノキが群生し、県のレッドリストで「都市部に残された樹林環境」と記されるなど、古歌に詠まれた景勝地の名残を今に伝える。
だが、森再生には、歴史資源を生かしたまちづくりを続ける猪名寺自治会など地元住民のたゆまぬ努力があった。何年も手入れがされず、ごみの不法投棄が相次いだ。外来種のシュロが生い茂り、暗い森だった。
2010年、「万葉の森・佐璞丘再生プロジェクト」が始動。樹木調査や清掃活動を定期的に開き、散策道も整備した。今では、周辺の白壁屋敷や大塚山古墳などとともに歴史遺産を巡るツアーコースになっている。
◆
16年2月上旬、人気アニメ「忍たま乱太郎」の主人公猪名寺乱太郎のルーツである「万葉の森」で、子どもたちと剣術や手裏剣投げの忍術訓練を行った。
15年に開校した忍者学校1期生の約10人。黒い衣装とカラフルな頭巾をかぶった子どもたち。まず剣術に挑戦した。新聞紙を丸めて作った刀を振り下ろすが、あっという間に子どもたちに取り囲まれた。
次は、手裏剣投げ。チラシを折って作った自作の手裏剣を持った子どもたちが二手に分かれて勢いよく投げつける。木の間に隠れたり、遠くから狙いを定めたりしていた。
16年5月には忍者学校第2期が開校した。同自治会の内田大造会長(68)は「体を動かすことで子どもたちも地元のことを楽しく学べる。地域の子は地域で育てて、いきいきと暮らせるまち猪名寺にしたい」と力を込めた。
▽1981(昭和56)年開業。2009年、猪名寺自治会を中心に住民らがエレベーター設置を要望する約1万人の署名を集め、2年後に完成した。1日平均の利用者数は1万6960人(2014年度、JR西日本調べ)。
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