住みやすい街「尼崎」急上昇の理由は駅前にあり ブランディング、「かんなみ新地」一斉閉業…市の戦略とは
2022/11/01 21:18
2007年ごろにマンション建設が進むなどして大きく様変わりしつつあるJR尼崎駅北側=尼崎市潮江
兵庫県尼崎のイメージが住みやすい街として急上昇している。最大の理由は「駅前再整備」だ。工場跡地で大型再開発が進んだJR尼崎、塚口駅をはじめ、阪急沿線でも塚口駅で2日に商業施設「ソコラ塚口クロス」が開業。今後10年以内に武庫川新駅(仮称)の設置も決まった。阪神沿線でも地固めともいえる動きが広がるが、そこにある市の戦略とは-。
関連ニュース
【写真】昭和54年以前に撮影されたとみられる阪急塚口駅前の「サンサンタウン」
「80年越しの悲願」阪急・武庫川新駅の設置決まる 尼崎、西宮両市、人口千人増
「塚口さんさんタウン3番館」跡地の商業施設、11月に開業 カフェや人気パン店27店舗 尼崎
1位=阪神尼崎▽3位=阪急塚口▽4位=JR尼崎▽5位=阪急武庫之荘。
民間会社の「穴場だと思う駅ランキング2022関西版」で、トップ5に尼崎市内の4駅が名を連ねた。
「駅前が変われば、まちの印象が変わる」。市の都市戦略担当職員が力を込める。尼崎の駅前開発の歴史は古く、阪急塚口駅の「ソコラ」の前身「塚口さんさんタウン3番館」は1978(昭和53)年に完成。市内に13ある駅前の多くにロータリーや歩道が整備された。
「時代が早かった分、老朽化が進んでいたが、都市基盤としては整っていた」。ただ、市はバブル崩壊以降、財政が悪化して巨額は投じられない。再整備を可能にしたのが「市民や企業の力」だった。
かつてクボタやヤンマー、森永の工場が連なったJR尼崎、塚口駅ではJR西日本などと連携しマンションや商業施設を整備。JR立花駅、阪急塚口駅前でも民間と協力した再開発が実を結んだ。この機を逃すまいと市は2021年度に都市戦略担当を新設し、「駅前ブランディング」に本格的に乗り出した。
◇ ◇
阪神沿線でも再開発への期待感が広がる中、官民の動きは加速している。
出屋敷駅の北側では、個人が約1億円の工事を寄付して広場をリニューアル。また、県警と協力して近くの違法風俗街「かんなみ新地」を一斉閉業に追い込み、市は土地建物を買収後、民間へ売却する予定だ。
大物駅では25年、近くの小田南公園に阪神タイガース2軍球場が移転することが決まり、付近の公園や緑地を巻き込んだ整備が本格化する。
そして、尼崎駅周辺。南側と北東側でのマンションや街路整備に続き、19年には寄付で尼崎城が完成した。市は23年度から一帯の道路や公園を民間管理者に一括委託し、イベントやまちづくりを一体的にできる体制を目指す。
そして、阪急神戸線では85年ぶりの新設となる武庫川新駅。期待感が高まる一方で、近くで農業を営む男性(73)は「商業地化が進むかもしれないし、交通量や違法駐輪などが増えて問題になるかもしれない。駅は『つくって終わり』とはいかない。市がどこまで周辺のまちについて考えているかが知りたい」と話す。
市の担当者は「うちの駅はいつ?というものも含め、駅前整備に関するさまざまな声も寄せられるようになった。同じような形にするのではなく、市民と一緒にどうブランディングできるかが問われている」と話す。(広畑千春、村上貴浩)