違法風俗街「かんなみ新地」閉鎖1年 ネットを騒がせた「考察」記事に尼崎市が異例の反論コメント
2022/11/04 17:00
かんなみ新地一斉閉鎖後の治安について注意を記す尼崎市の公式ホームページ
「本市の犯罪認知件数は平成以降、過去最低となりました」-。兵庫県尼崎市の違法風俗街「かんなみ新地」の一斉閉業から1年が迫る中、市が異例のコメントを公式ホームページに掲載した。引き金はネット上のとある記事だった。風俗街に性犯罪を抑える効果があったかのような書きぶりに対し、市は「明らかに治安は良くなっている。もっと全国に知ってほしい」と怒りをにじませる。(浮田志保)
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■「全く根拠のない情報」
かんなみ新地は同市神田南通の一角で戦後70年にわたって無許可営業を続けたが、2021年11月に市と県警が風営法に基づく警告を出して全37軒が一斉に閉業。市は土地建物を買収後、民間に売却する方針だ。
「ネット記事は全く根拠のない情報ですよ」。市の担当者は憤りを隠さない。
その記事は今年9月29日に掲載された。21年度に県内の性犯罪認知件数や性被害相談がいずれも前年を上回ったことを挙げ、「一斉閉業が一因では」との声を紹介。跡地付近で起きた公然わいせつ事件に絡んで一帯がゴーストタウン化する懸念を示し「歓楽街の存在自体が犯罪抑止に一役買っていた可能性も検証の余地がありそうだ」と記した。
これに対して尼崎市は10日1日、公式ホームページに「かんなみ新地閉業後の本市の治安について」と題してコメントを掲載した。「閉業後に尼崎市の治安が悪化しているとの情報がありますが」とつづり、こう反論している。
「本市の犯罪認知件数は2020年4355件、2021年3809件と、昨年は平成以降過去最低の件数となりました。引き続き、市民の体感治安向上に向けた取り組みを進めてまいります」
■「体感治安」が分ける自治体の命運
市がこれほどに反応するのは、市民の体感治安が自治体の命運を分ける課題になっているからだ。子育て・若者世帯を対象にした20年のアンケートで「市外に移りたい」「市内に住みたくない」とした世帯に理由を尋ねると、共に最多の5割以上が「治安・マナーが悪いから」を選んでいる。
この10年間で刑法犯認知件数は57%減り、7年前に8カ所あった暴力団事務所も今年9月で全てなくなった。その過程で、市民の防犯運動の高まりを受けて実現したのが、かんなみ新地の閉業だった。
尼崎市は「こびりついたイメージの払拭は簡単でないが、全力で臨んでいる。あの手この手で外にも発信したい」としている。