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7月、米ハリウッドでの記者会見に出席したアンジェリーナ・ジョリーさん(ゲッティ=共同)
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7月、米ハリウッドでの記者会見に出席したアンジェリーナ・ジョリーさん(ゲッティ=共同)

 米人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが昨年、遺伝子検査の結果を基に両方の乳房の切除・再建手術を受けて注目された遺伝性乳がん・卵巣がん。将来の発症リスクを推定する根拠はこれまで海外データのみだったが、国内で検査を受けた人を登録し経過を追う研究が、厚生労働省などの支援で始まった。診療施設の認定制導入も学会が検討中だ。専門医は「ジョリーさんの行動が病気への関心を高めた。この機運を国内の診療改善につなげたい」と話す。

 国内では毎年新たに約6万人が乳がんになる。海外研究に基づく推計では、うち3千人程度がBRCAというがん抑制遺伝子に変異があるために起きる遺伝性乳がんだ。ジョリーさんはこの遺伝子の変異が検査で見つかり、主治医が「87%」と見立てた将来の乳がん発症リスクを減らすため、乳房の切除を決めた。

▼発症確率に幅

 変異でがんの確率が高まるのは確かだが、発症確率の数字は研究によって幅があり「変異イコールがん」ではない。このため検診を強化し早期発見を目指す人も多い。

 国内でBRCA検査を受託しているのはファルコバイオシステムズ(京都市)1社。健康保険は適用されず二十数万円かかるが、ジョリーさんの件が報道された2013年度の検査数は約千件と、前年度の約500件から倍増した。検査可能な病院も12年度末の82カ所から13年度末は137カ所に増え、現在は兵庫の4カ所を含めほぼ全国で受けられるという。

▼経過を追跡

 しかし、変異があると乳がんなどになる確率はどの程度か、日本人に特化したデータはない。「正確なリスク評価には国内の実態を明らかにする研究が必要だ」と、がん研究会有明病院(東京)の新井正美・遺伝子診療部長は指摘する。

 このため、専門医らでつくるNPO法人が今年から、BRCA検査を受けた本人や家族を登録し、経過を追跡する研究に乗り出す。厚労省も支援し、約3年で千人程度の登録を目指す。

 一方、日本乳癌学会など複数の医学会は、遺伝子検査やその後の診療に当たる医師らの教育と施設認定に取り組む方針。

 中心となっている中村清吾・昭和大教授(乳腺外科)は「家系内に乳がんが多いなど対象を絞って調べると、国内でも検査を受けた人の30%にBRCA変異が見つかる。乳がんを診る医師は全員が知っておくべきで、患者さんに必要な情報を提供すべきだ」と話す。

▼家族のために

 だが、これまでは医師の認識も情報提供も十分ではなかった。関東地方の会社員A子さん(34)の体験がそれを物語る。

 A子さんが乳がんになったのは09年。父方の親類にがん患者が複数おり、当時の主治医は「遺伝性の可能性もあるかも」と遺伝子検査のパンフレットを差し出したが、同時に「費用は自費だし、検査しても特にできることはない」と説明した。

 A子さんは切除範囲が小さい乳房温存手術を選び、抗がん剤と放射線の治療も受けた。しかし11年、同じ側にがんが再発。再手術の後、つてがあった海外の病院に転院し、自ら希望してBRCA検査を受けた。

 結果は陽性。「自分より家族が心配になった」A子さんは、日本の家族に検査を勧めた。父、姉も陽性だった。結果を踏まえて父はがん検診を受け、ごく早期の胃がんを発見。治療で完治した。姉は計画的な検診を続けている。A子さん自身は海外で、反対側の乳房の予防切除と再建手術を受けた。「最初にリスクを知っていたら乳房温存は選ばなかった」と振り返るA子さんは「検査後どうするかは本人の選択だが、リスクを知る検査があることは知らせてほしい」と話している。

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