御影の焼き菓子専門店 「幻のサブレ」人気の秘密は 開店前に行列、通販は売り切れ
2022/06/09 17:12
オンラインでは常に売り切れで「幻のサブレ」と呼ばれている「フレンチビスキュイ」(マモン・エ・フィーユ提供)
今夏に開店5周年を迎える焼き菓子専門店「マモン・エ・フィーユ」(東灘区御影2)に、インターネット上で「幻のサブレ」と呼ばれる商品がある。幾何学模様の缶に、シンプルなビスケットがぎっしり入った「フレンチビスキュイ」(税込2787円)。オンラインストアでは常に売り切れで、店舗には開店前からビスキュイを求める人たちが列を成す。その人気の秘密に迫った。
関連ニュース
【写真】レーズンサンドやマドレーヌなどが並ぶショーケース
「安すぎると売れない」神戸のスイーツ激戦区
人気ギョーザ店の9色「マカロン」 知名度上昇で「インスタ映え狙い」の書き込み…炎上覚悟で反論した店主の思いは
同店は、京都市での間借り販売や百貨店での催事出店などを経て、初の常設店舗として2017年7月にオープン。松下美千子さん(73)と娘の奈保さん(52)が手がけており、日常の中で気軽に食べられる気取らない“おやつ”が並ぶ。
ビスキュイは、店舗を構えるより前の15年頃から販売。素朴な味わいの評判は口コミや交流サイト(SNS)を通して広がり、百貨店の催事では毎回完売するなど看板商品に育った。
元々は、幼少期の奈保さんが美千子さんと一緒に作ったクッキーが原点。お菓子作りが趣味だった美千子さんは、海外から材料を取り寄せて、ガレットやフルーツケーキなど本格的なフランスの焼き菓子を毎晩のように焼いていた。その中でも、一緒に型抜きを楽しんだ「思い出の味」を再現したのがビスキュイだ。
こだわったのは、口溶けの良さとのどごし。「母が作ったお菓子は飲み物がいらないくらいにスルスル食べられた」と振り返る奈保さんは、その味を再現するために材料を厳選。精製方法から見極めた砂糖や国産の発酵バターを使い、「あともう一枚」と手が伸びてしまうようなシンプルな味わいに仕上げた。
また、少しレトロな菊型は、恐竜型など凝った型を使いたがる幼い奈保さんが、「案外これもかわいいのよ」と美千子さんに勧められて魅力に気づいたもの。さらに、フランスのパリで奈保さんが一目ぼれした、赤と青の幾何学模様をあしらった容器の缶も人気を押し上げている。
知人へのプレゼント用に買いに来たという近くに住む女性(45)は「サクサクして素朴な味わいだから何枚でも食べれちゃう」とほほえむ。
しかし、「実はここまで人気になると思わなかった」と松下さん親子。「フィナンシェやマドレーヌ、レーズンサンドなどの方が商品化するまでに試行錯誤したし、思い入れが深い」と笑う一方、「それでも思い出の味が皆さんに愛されてうれしい。それぞれの大切な料理やお菓子を思い出して、温かい気持ちになってもらえたら」と願う。
7月12日で開店5周年。「お店をできるだけ長く続けて、ワクワクするようなお菓子を食べてもらいたい」と奈保さん。「でも働くために生きてるわけじゃない。家族との時間や一人で過ごす時間はつくって、大切な思い出や味は忘れないようにね」。
午前11時~午後6時。火曜定休。同店TEL078・414・7842
(綱嶋葉名)
→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)