六アイ「越境通学」なぜ 西側の大型マンションが東側校区に 伏線はラグビー場売却
2022/08/09 17:03
島内で唯一、六甲ライナーを基準線としない小学校区が設定されたマンション「シーフォレスト神戸ルネ六甲アイランドCITY」=神戸市東灘区向洋町中9
取材で六甲アイランド(神戸市東灘区)に通っていて、どうしても気になることがあった。小学校区の境界だ。島内には公立小学校が2校あり、ちょうど島の中央あたりを南北に走る「六甲ライナー」を境に、きっちり東西で校区が分かれている。ところが、唯一、例に漏れるマンションが存在するのだ。理由を調べてみた。(井上太郎)
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■なぜか「越境」
島内の小学校の通学区域は、六甲ライナーより東が六甲アイランド小、西は向洋小に設定されている。
ところが、南端のマリンパーク駅前にある「シーフォレスト神戸ルネ六甲アイランドシティ」(東灘区向洋町中9)はただ1棟、その法則から外れる。六甲ライナーの線上より西に位置するにも関わらず、校区は東側にある六アイ小に入るのだ。
15階建て268戸のシーフォレスト-は2018年、阪神・淡路大震災で被災して閉鎖したテーマパーク「AOIA(アオイア)」跡地に完成した。この大きなマンションだけがなぜ向洋小校区を外れ、「越境」の対象となっているのか。
理由は、二つの小学校の児童数にあった。
■西側の建設ラッシュ
2小学校の児童数は元々、六アイ小の方が多かったが、この10年で3割以上減り、反対に向洋小はほぼ2倍に急増。12年に逆転後、その差は広がり続ける。21年度は向洋小951人に対し、六アイ小はほぼ3分の1の339人にとどまった。
これには、島内でのマンション開発の動静が大きく関係していた。
六甲アイランドの西側は、まちびらきの1988年に決定した地区計画で文化・スポーツ施設の整備が重視され、北西部約4・2ヘクタールもの敷地にアパレル大手・ワールドのラグビー部のグラウンドが広がっていた。
不動産鑑定士事務所「神戸シティ鑑定舎」(東灘区森北町6)によると、まちびらき当初、マンション建設は東側に集中し、児童数も六甲アイランド小に偏っていた。
しかし、05年にワールドがラグビー場を売却すると、西側でマンションの建設ラッシュが始まる。ラグビー場跡地に「ブリリア六甲アイランドブランズリビオ」(08年、495戸)、「ブリリアレジデンス六甲アイランド」(12年、455戸)が、さらに14年には向洋小の南に「六甲アイランドシティW7レジデンス」(440戸)も建った。
そして18年、シーフォレスト-が完成した。
■校区変更ではない
人口急増に、「子どもが小学校に入る前に西側の新しいマンションに移った」(30代女性)といった島内での人口移動も相まって、向洋小では23あった普通教室が不足する事態となる。
17年4月、校庭の一角に8教室を備えた2階建ての仮設校舎が建った。東灘区内の代表的なマンモス校、魚崎小(21年5月1日時点で1134人)や本山第二小(同1136人)にも迫る規模になった。
シーフォレスト-が建ったのはまさに向洋小の児童急増期で、仮設校舎にも空きがなかったため六アイ小校区に組み込まれた、というのが真相だった。市教育委員会は「通学距離もそれほど遠くならないことを踏まえ総合的に判断した」と説明する。
ただ、校区設定が変更されたわけではない。六甲ライナー終着駅マリンパーク駅よりもさらに南側に立地するシーフォレスト-は厳密には「六甲ライナーより西」ではなく、「以前は工業用地で、校区設定がなかった場所」(市教委)だったからだ。
市教委学校環境整備課によると、向洋小学校区で来年度に入学する5歳児は現1年生と同程度の163人いるが、0歳児は84人しかおらず、今後は向洋小でも児童数が減少に転じるとみている。(井上太郎)
→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)