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自身の文学の原点をつづった短編集を出した福本信子さん。亡夫が撮影した風景写真の前で=姫路市大津区平松
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自身の文学の原点をつづった短編集を出した福本信子さん。亡夫が撮影した風景写真の前で=姫路市大津区平松

 エッセイスト福本信子さん(78)=兵庫県姫路市=が自身5作目となる著作「K先生への手紙」を刊行した。尊敬するフランス文学者へ宛てた手紙の体裁を取った表題作など計7編がそろう短編集で、いずれも文学を追求してきた自身の歩みや思いと重なる。一昨年末の夫の死をきっかけに出版を決意したといい、「私小説とエッセーの中間。自分をさらけ出し、ありのままを書いた」と話す。

 福本さんは少女時代から文学に親しみ、22歳の約1年間、作家獅子文六の自宅で家事手伝いとして働いた経験を持つ。数々の出会いや折々の出来事を寄り添うような眼差しと柔らかい文体で表現してきた。

 今回の著作を出したのは最愛の夫の正義さん=当時(81)=を誤嚥で亡くし、「やるせない気持ちを書き留めたかった」からという。短編「油断」は正義さんが刺身をのどに詰まらせた様子をリアルに描いた。「悲しみや寂しさよりも、油断した後悔のみが脳裏に隙間も無く増幅されていった」。心の奥底に流れる感懐が胸を打つ。

 「K先生への手紙」では憧れながらも会う機会が無いまま死去した「K先生」への思いを手紙の形でつづる。先生への批評を乞う形で挿入した作中作には、父が小説家を目指していたことを知った小学生時代のエピソードを盛り込み、創作への興味を抱いたきっかけを描く。死ぬまで書き続けたいといま思うのは「父が、私に遺していった遺伝子のせいかもしれない」と記した。

 敬愛する作家島京子さんを囲む定例の会食「カレーの会」を題材にした作品は、作家や歌人、医師、大学教授らとの長年の交流を愛惜の念を込めて描いた。

 短編集だが、自らの文学の出発点や原動力を示す「自分史」として読める。福本さんは「文学は魔物。一度踏み込めばどこまでも自分をさらけ出したくなる。業が深いのでしょうか」と話す。

 編集工房ノア。232ページ。2160円。31日正午ごろから、同市大野町の井上書林でサイン本の販売会を行う。(伊田雄馬)

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