姫路

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「市民に造る意味が明確に示せているか」と問う帝塚山大名誉教授の中川幾郎さん=大阪市内
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「市民に造る意味が明確に示せているか」と問う帝塚山大名誉教授の中川幾郎さん=大阪市内

■造る意味 徹底論議を

 文化ホールは各自治体が多額の公金を投じて整備してきた定番の公共事業だ。しかし立派なハコができても閑古鳥が鳴くところも少なくない。姫路市が建設する文化コンベンションセンター。元行政職員の経験を生かし、多くの自治体の文化政策を見詰めてきた帝塚山大名誉教授の中川幾郎さんは「市民に造る意味を明確に示せているか」と疑問を投げ掛ける。(宮本万里子)

 -姫路市が約245億円をかけてホールや展示場を備えた施設を造る。

 「まず肝心なのはなぜ造るのかということ。多くの自治体は設置理由を『市民の芸術文化振興のため』などとお定まりの表現でふわっと説明する。そもそもホールや図書館、公民館、博物館などの整備は法的に義務付けられた自治事務ではない。つまり文化芸術施設を造らなくても法律違反ではないので、曖昧な理由になりがちだ」

 「文化施策の責任の所在を明確にするためには条例が必要だ。しかし姫路をはじめ設けている市は少ない。関西では大阪や京都市、兵庫県では明石や芦屋、宝塚市など。条例がなければ施策や事業は首長の思い付きや議会の勢力に左右され、安定して展開できない。そんな状態で大型施設を造ると完成してから肝心のソフトが伴わなくなる。これは無責任で危険なことだ」

 -本来、施設を設ける前にどんな準備が必要か。

 「都市の活性化、集客力強化という目的では不十分だ。例えば姫路は岡山と神戸の間の中核市。埋没しないためには精密なマーケット分析が欠かせない。その上で規模を考え、設計に入り、開館後は神戸とも岡山とも違うインパクトを打ち出さなくてはならない。インパクトとは建物のデザインではない。姫路でしか見られない催しを考えること。ソフト面の勝負だ」

 -考え方として大切な軸は何か。

 「文化・芸術に触れることはそもそも人権だ。全ての人が公平・平等に触れる権利がなくてはならない。しかし所得や地域によって偏差がある。都心にばかりホールが集中し、都会から離れた地方では一流の芸術に接する機会が少ない。自治体の役割は全域に届けられるよう目配りをすることだ。大津市にある滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは県内各地への音楽普及活動を展開し、評価された。もう一つ、まちが持つ歴史の軸をどう踏まえるか。どの時代にまちが最も輝いたかに注目し、何を地域の文化として位置付け、育むべきかを考える必要がある」

 -姫路の新施設は起工式が行われ、3年後に開館。望ましい運営方法は。

 「まず、市民の中で文化がどれほど醸成されているか、ニーズは何かを正しく把握することが第一。でないと芸術の供給量を決められない。そして施設が空いている時間帯をつくらないことが大事。新施設の大ホールは2千席というが、稼働率をどう考えたのか。埋めるには相当な努力がいる。使われない時間は児童や生徒に使ってもらうのも一つの手。芸術教育は想像力と創造力を養う」

 -市民にできることは。

 「市民の中に名プロデューサーが生まれることが望ましい。行政と手をつなぐことができ、自らも学習、変革する意志を持つ集団のイメージだ。京都府舞鶴市でそんな人々の活躍例がある。市はそうした市民と一緒になって姫路として広く売り出せる個性を磨くことが何より重要だ」

【なかがわ・いくお】1946年、大阪府豊中市生まれ。同志社大卒業後、豊中市役所で27年間、文化行政や広報を担当。帝塚山大教授を経て2014年から現職。神戸市地域活動推進委員長などを歴任。日本文化政策学会顧問。大阪大博士。専門は公共文化政策。

<記者の目>公共の重み受け止めて

 曖昧さを許さない。自ら関わったからこそ知る自治体独特の手法への指摘はどれも歯切れよく、公共施策への厳しい見方を感じた。なぜ姫路に新施設が必要か。全市民のためになるのか。市はどれほど的確に説明できるだろうか。約53万人の市民をくまなく見渡し、人権として恩恵を提供する-。公金の重みを受け止め、広く深く議論を重ねながら市民が誇れる施設にしてもらいたい。

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