姫路

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古民家で酒食を楽しむ地元住民ら=姫路市網干区余子浜
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古民家で酒食を楽しむ地元住民ら=姫路市網干区余子浜
「網干サロン」を企画する加藤三郎さん(右)=姫路市網干区余子浜
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「網干サロン」を企画する加藤三郎さん(右)=姫路市網干区余子浜
丹念な手作業で提灯を作る西原義人さん=姫路市網干区興浜
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丹念な手作業で提灯を作る西原義人さん=姫路市網干区興浜
神戸新聞NEXT
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 新しい年が明けた。兵庫県姫路市は今春、市制施行130周年、そして市町合併で現在の市域となって13年となる。人口減少、少子高齢化が加速する中、地域の底力がますます問われる時代だ。連載「ヒメヂカラ」では「姫路から」を合言葉に地域のチカラ(力)を見詰め、どんなカラー(色)で魅力を発信できるか、五つの地域を歩いて考える。

 重厚な門をくぐると主屋から明かりが漏れ、談笑が聞こえてきた。江戸末期にできた国登録有形文化財「加藤家住宅」(姫路市網干区余子浜)で月1度開かれる「網干サロン」だ。

 主宰は第13代当主の加藤三郎さん(76)。姫路工業大学(現兵庫県立大学)卒業後、島津製作所(京都市)でロケットや人工衛星を設計・研究する技術者として活躍。定年後に地元に戻り、「人脈を社会に還元したい」と2005年にサロンを始めた。

 講師は加藤さん自ら選んだ文化人や経営者、学者、行政関係者ら。仙台、東京、京都などからも招き、節目の100回目では姫路市長石見利勝さん(77)がまちづくりを語った。「昔はどの家でも人が集まり、交流するのが当たり前だった。その姿を復活させたい」

 165回目のこの日の講師は東証1部上場の鋳物メーカー、虹技(姫路市大津区)の社長山本幹雄さん(59)。前身の神戸鋳鉄所以来の歩みに触れ、「地元への愛着を会社経営に生かしたい」と力説。座敷を埋めた25人が耳を傾けた。

 網干は江戸時代、揖保川と瀬戸内海の利を生かした水運・海運の拠点として栄えた。揖保川沿いに残る豪商の屋敷跡や古民家が名残を感じさせるが、その数は減りつつある。

 加藤さんは住民グループ「あぼし人と景観まちづくりの会」のメンバーとして、地域の古民家の再生に取り組む。歴史的建造物の維持には手間がかかるが、「費用は30年で建て替えが必要な現代住宅の3分の1で済む」という。

 古民家は網干の景観そのものだ。「住民の共有財産を預かっている感覚」。草むしりや障子の張り替えでは地域住民の手を借りる一方で、行事の際は屋敷を開放。近くの幼稚園児らも訪れ、畳や庭先で遊ぶ。

 古民家の保存活用からどう地域革新の力を引き出すか。「人口は減るが、住民の交流を活発化させていけば地域の活力は保てる」。都市が縮小に向かうときだからこそ、その取り組みが光を放つ。

 「エーノンジャー!」。男衆が気勢を上げ、長さ約3メートルの青竹をぶつけ合う。竹の先の提灯(ちょうちん)が割れる。網干を代表する秋祭り、魚吹八幡神社秋季例祭の宵宮で催される「提灯練り」だ。闇夜の中でぶつけ合う様は勇壮で幻想的だ。

 揖保川のほとりに網干区でただ1軒の提灯専門店がある。西原洋傘提灯店(網干区興浜)だ。西原義人さん(68)は祖父の代から続く店を妻の雅子さん(68)と切り盛りする。

 店には製作中の商品が所狭しと並ぶ。曲面や凹凸の多い火袋に文字や家紋などを書くのが主な仕事だ。「書くというより肉付けやね」と西原さん。鉛筆で文字の芯を書き、毛筆で丁寧に太くしていく。書き上げると一気に書き上げたような美しい文字になる。筆は穂を真ん中より先で縛り、穂先だけを使う。

 西原さんは東芝姫路工場で蛍光灯の生産に携わり、定年後に家業に戻った。近くに2軒あったという提灯店は職人の高齢化と需要減で店を畳んだが、「柔らかな色の光は日本文化そのもの。できる限り長く、ここで作り続けたい」

 丹念な手仕事が生み出す網干の明かり。人々が暮らす地域の未来を温かく映し出している。(伊田雄馬)

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