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2017年の砥峰高原の山焼き。点火役を務めた男性がやけどを負い、後に死亡した=神河町川上
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2017年の砥峰高原の山焼き。点火役を務めた男性がやけどを負い、後に死亡した=神河町川上

 兵庫県神河町川上の砥峰高原で点火作業中の男性=当時(62)=が全身にやけどを負って後に亡くなった山焼きの事故は、発生から約3年を経て、主催者の川上区の区長(63)が業務上過失致死容疑で書類送検(3日付)された。山焼きや野焼き中の事故は全国で相次ぐが、関係者の刑事責任を問うケースはまれ。今後は神戸地検姫路支部の判断に焦点が移る。

 村上春樹さん原作の映画「ノルウェイの森」のロケ地でも知られる砥峰高原は、同町の主要観光地。恒例の山焼きでは、90ヘクタールをおおむね1時間半で焼く。

 火を扱うのは経験者4、5人に限る。2017年4月16日。男性らは午後2時ごろに頂上を出発し、4方向に分かれて麓へと下りながら火を入れた。事故は同3時50分ごろ、麓付近で起きた。周囲が異変に気付き駆け付けると、男性が炎に巻かれていた。全身のやけどで病院に搬送され、6月に亡くなった。

 会場にいた関係者によると、事故直前は「火の回りが遅い」との理由で、例年とは異なる対応が散見された。本部席にいた区長が急きょ点火に加わるなど「場当たり的と言われても仕方がない」状況だったと振り返る。

     ◇

 事故は初めてではなかった。この5年前にも、別の点火担当者が両手をやけどしている。「騒ぎにしたくない」という本人の希望で救急車を呼ばず、福崎署にも届けられていなかった。

 村の伝統行事で、経験者ほど「けがをするのは本人の不注意」(住民)との考えが根強い。死亡した男性も過去に火入れの経験があり、住民たちは「火の扱いには慣れていたはずなのに」と困惑していた。

 個人の判断に任せ過ぎていたのではないか-。区や町は死亡事故を受け、18年末ごろに作業マニュアルを策定。防火帯の設置や装備のチェックなどを義務付け、単独行動や焼き直しの禁止も明文化された。捜査関係者は「裏を返せば、こういう対策をもっと早く取るべきだったし、取れた」と話す。

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 山焼き、野焼きの事故は全国でも後を絶たない。

 山口県美祢市の「秋吉台国定公園」では17年2月、枯れ草に火を付けていた当時48歳の男性が焼死。同3月には熊本県高森町で1人が死亡、同県南阿蘇村で2人が重軽傷を負った。18年にも島根県の「三瓶山」で計画外の区域に延焼して車が燃えた。

 中には自治体が遺族に賠償するケースもあるが、いずれも関係者への刑事処分は下っていない。

 神戸大の大塚裕史名誉教授(刑事過失論)は「地域の行事で経験者として火を扱うということは、本人の意思による『危険の引き受け』ともみられ、過失犯の成立を阻むことも考えられる」と指摘。一方で、警察が書類送検した判断については「事故原因があいまいであればあるほど、『過失を問えないという確証もない』ということになる。違和感はない」とした。(井上太郎)

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