姫路

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姫路空襲と東京・山の手大空襲。2度の戦火を振り返る藤森春樹さん=姫路市船橋町3、旧藤森家住宅
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姫路空襲と東京・山の手大空襲。2度の戦火を振り返る藤森春樹さん=姫路市船橋町3、旧藤森家住宅
姫路空襲で実際に使用された焼夷弾の筒。地面に突き刺さると爆発し、油をまき散らして火災を広げる=姫路市平和資料館
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姫路空襲で実際に使用された焼夷弾の筒。地面に突き刺さると爆発し、油をまき散らして火災を広げる=姫路市平和資料館

 第2次世界大戦中、「姫路空襲」と「東京・山の手大空襲」の両方を体験した男性がいる。兵庫県姫路市本町で長く藤森耳鼻咽喉科(旧藤森病院)の院長を務めた藤森春樹さん(94)=同市=だ。4日で2度目の姫路空襲から丸75年。いや応なく戦地に赴き、将来を奪われた同級生も少なくない。過酷な経験を重ねた藤森さんは「こんな時代があったと知っておいてほしい」と語る。(井沢泰斗)

 藤森さんが暮らすマンションのそばに、今は市文化財課が管理する「旧藤森家住宅」がある。

 日中戦争さなかの1939年に建てられた木造建築で、敷地は約2千平方メートル。戦時中には姫路駐屯の旧陸軍騎兵第十連隊長が通い、戦後には石見元秀・元市長や、飾磨市との大合併を推し進めた進駐軍のラモート中佐らが会合を開いた。

 その旧宅で、藤森さんはおぼろげな記憶をたどり始めた。

     ◇

 1945年5月25日夜~26日未明、B29爆撃機が3300トンの焼夷(しょうい)弾を東京・青山や渋谷に落とし、約3600人の命が奪われた山の手大空襲。旧制姫路中学(現姫路西高)を経て東京・豊島区の学習院高等科(現学習院大)に進学していた19歳の藤森さんは、学校近くの電車内で空襲警報を耳にした。

 校庭にあった防空壕(ごう)に飛び込み、3時間ほど身を固くした。このときの様子を「打ち上げ花火が雨のように落ちてきた」と表現する。夜明けを待ち、明治神宮野球場近くにあった兄宅へ歩き始めると、延々と続く焼け野原が目に入った。

 「惨めなもんや。あんな光景、二度と見たくない」。建物の残骸から立ち上る煙の向こうに、焼け焦げた遺体がいくつも転がっていた。

     ◇

 「確かこの辺りです」。藤森さんが、旧宅の庭の一角をステッキで指した。

 計514人が命を落とした「姫路空襲」は、6月22日と7月3日深夜~4日の2度にわたった。下宿先を失った藤森さんが姫路へ戻ったのは、1度目の空襲直後だった。植木屋に頼んで庭に防空壕を掘ってもらったのを覚えている。

 7月3日深夜、ラジオから空襲を知らせる放送が流れた。「病院を見てくる」。院長だった父・真治さんは、本町にある当時の藤森病院へ走った。

 家の明かりを消し、防空頭巾をかぶって母や姉と壕に入る。しばらくして「ザァー」という焼夷弾の音が聞こえてきた。燃え盛る火に、漂う油の臭い。後に伝え聞いた状況は、藤森さんの記憶にない。「とにかく穴の中にじっと身を潜めるしかなかった。姫路の街は狭いから絶対やられると」

 2時間がたち、飛行音がやんだ。程なく父が帰ってきた。「(周りに)全然、家があれへん」。ぼうぜんとしたつぶやきは、今も耳に残っている。

     ◇

 市史の「戦災概況図」によると、姫路城の南側を焼き尽くした戦火は船場川を越え、藤森家のすぐ東側で止まっていた。それだけではない。病院もまた、奇跡的に焼け残った。

 周辺の診療所などが軒並み焼けたため、藤森病院には各分野の医師が集まり、「急造の総合診療所」のような役割を果たした。終戦後、藤森さんは県立神戸医科大(現神戸大医学部)へと進み、耳鼻科医として63年間働いた。

 大戦では多くの同級生が士官学校や特攻隊に志願し、徴兵された友も戦地で若き命を落とした。旧長崎医科大の予科に進んだ中学時代の同級生は、帰省中に姫路空襲を受けて長崎へ戻り、そこで原爆の犠牲となった。対照的に、軍医として広島に赴任していた兄は、大阪へ出張中に原爆が落ち、奇跡的に生き延びた。

 「あの時代は、ちょっとした違いで人の命が決まった。それが戦争やったんです」。ゆっくりと説くように、戦争の不合理さを訴えた。

【姫路空襲】第2次世界大戦末期の1945年に、姫路市街地が焼き尽くされた2回の空襲。1回目があったのは6月22日午前で、標的は姫路城東側の川西航空機姫路製作所。約60機のB29爆撃機が約1500発を落とし、341人が犠牲になった。2度目となった7月3日深夜~4日未明には、9千発以上の焼夷(しょうい)弾が投下され、173人が亡くなった。米軍の「戦術作戦任務報告書」によると、2度の空襲で全市街地の76・7%が壊滅した。

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