お面や人形でコロナ封じ? 年中行事に用いる品々を集めた特別展「日本の祭礼玩具と節句飾り」が、兵庫県姫路市香寺町中仁野の日本玩具博物館で開かれている。日本各地に伝わる祭りや節句は元来、疫病退散や豊作、平穏な暮らしを願うもの。いかめしくもおちゃめな造形は、見えないウイルスにおびえ疲れた心も癒やしてくれる。(平松正子)
同館の6号館を使い、西室に節句飾り約400点、東室に祭礼玩具約600点を展示している。
節句行事は中国から伝わり、農耕儀礼や人形愛好、子どもの成長祈願など、日本独自の要素が加わって発展してきた。その美しさで際立つのは、何といっても桃の節句のひな飾り。展示品の一つ、大正時代に作られた檜皮(ひわだ)ぶきの御殿飾りは、家が1軒建つほどの高級品だったといい、娘を思う親心がうかがえる。
正月に回して遊ぶこまは、形も仕掛けも実に多彩。雪の上でも回る東北の「ずぐり独楽(ごま)」、砲弾形をした九州の「けんか独楽」など、地域ごとに違って面白い。七夕飾りでは、播磨や生野地方に伝わる紙衣(かみごろも)、飾磨で飾られた七夕の船など、地元ならではの特色も見られる。
祭礼玩具では、青森の弘前ねぷた、岐阜の高山祭、長崎くんちなど、全国各地の祭りを彩るユニークな山車(だし)やみこし、作り物を紹介。展示室に並ぶのは、かつて祭りの露店で売られていたミニチュアだが、子どもたちはそれらで遊びながら、地域の担い手としての誇りを育んだのだろう。もちろん、播州の秋祭りの屋台もある。
もう一つ、祭りに欠かせないのが、お面だ。悪霊をはらう真っ赤なてんぐ面、稲荷の使いと信じられていたきつね面、病魔を封じる猿面、汚れた世界を笑いで一新するおかめやひょっとこ…。昨今のプラスチック製と違い、張り子の面には作り手の思いが宿り、何らかの“御利益”がありそうに思えてくる。
井上重義館長は「昭和初期に文化人が盛んに集めた玩具コレクションが当館に寄贈されており、今回の展示にもそれらが含まれている。文化財としての価値が認められず、今では廃れたものも多いが、先人が節句や祭りに託してきた願いに触れてほしい」と話す。
10月25日まで。原則水曜休み。一般600円、高校・大学生400円、4歳以上200円。同館TEL079・232・4388
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