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「小説といえども社会と接点を持った作品を書いていきたい」と話す中島妙子さん=姫路市内
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「小説といえども社会と接点を持った作品を書いていきたい」と話す中島妙子さん=姫路市内

 播磨(兵庫県)の老舗同人誌「姫路文学」で編集人を務める作家の中島妙子さん(85)=同県姫路市=が、3冊目となる小説集「クロノスの庭」を出版した。いじめや同性愛、在日コリアン、家庭内暴力など、社会的なテーマをはらんだ意欲作で、書評専門紙「図書新聞」で取り上げられるなど、中央文壇からも注目される。(平松正子)

 中島さんは同県宍粟市出身。1958年から中学教師として同市や同県尼崎市で教えた。在職中に詩作を始め、これまでに詩集3冊を発表。94年の退職を機に姫路へ移り住み、「姫路文学」に参加して小説にも幅を広げた。2011年度には、姫路文化賞(姫路文連主催)と姫路市芸術文化年度賞(同市主催)をダブル受賞している。

 小説集としては8年ぶりとなる新著には、短編8編を収めた。

 表題作「クロノスの庭」は職場でのいじめがテーマ。主人公ショウコは、通称「カムサビ女王」というベテラン女性が君臨する「星ケ丘」へ転勤する。女王は標的を定め、事あるごとに「怠け者」「差別者」と面罵する。上司や同僚は見て見ぬふりで、過去には自殺者も出たという-。

 作中で職種は明記されないが、中島さん自身も勤務経験のある、人権教育が過熱しがちだった学校現場をイメージしたという。「疑義など呈したらひどい目に遭う。1人では声を上げられない、日本人の同調性を書いておきたかった」と話す。

 「夜のカスパー」は夜間中学が舞台。国語教諭の佐保子が知的障害のある則夫に作文を指導し、人間性を磨いていく感動作だ。これも実体験が基にあるそうで、中島さんは「その生徒から『頭の中が一つにつながった』と言われた時の感動は忘れられない。夜間中学での5年間は実に豊かな体験でした」と振り返る。

 ほかに、在日韓国人女性の日本国籍取得を手助けする「鳳仙花(ポンソナ)」、息子の家庭内暴力に向き合う父親を描いた「冬の梟(ふくろう)」、同性愛者であることを隠して生きる男性教員の物語「秘密の花園」など。いずれも重く深刻な題材を扱いながら、不思議に快い余韻を残す。

 「37年間も学校現場にいて、いかに絶望的な状況でも人間はしたたかに生きていくと学んだ。生きる力ってすごいんですよ」と中島さん。自身の創作意欲も衰え知らずで「執筆は孤独な作業だけれど、この年になってもまだ書かずにいられない。他者と交わり、言葉に表現するのは、人間本来の欲求じゃないかしら」と笑う。

 編集工房ノア刊、2200円。

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