姫路

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のぼり製作の引き継ぎ作業を見守る妻鹿地区の藤田佳久さん(中央)=姫路市飾磨区妻鹿
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のぼり製作の引き継ぎ作業を見守る妻鹿地区の藤田佳久さん(中央)=姫路市飾磨区妻鹿
「けんか祭り」で松原地区の獅子係を務めるはずだった児嶋宏さん(左)と藤尾哲さん=姫路市白浜町(撮影・小林良多)
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「けんか祭り」で松原地区の獅子係を務めるはずだった児嶋宏さん(左)と藤尾哲さん=姫路市白浜町(撮影・小林良多)

 「灘のけんか祭り」が中止に-。そのニュースを衝撃を持って受け止めた祭り関係者の中には、一生に一度の晴れ舞台を逃した男たちもいた。彼らはどのような思いを抱き、割り切り、秋を過ごしているのか。灘の町を訪ねた。(井沢泰斗)

■同級生と力合わせたかった 松原・獅子係会長 児嶋宏さん

 「この獅子檀尻(だんじり)は、僕が27歳で保存会の会長をやった時に新調された。だから思い入れはすごくある」。松原八幡神社(兵庫県姫路市白浜町)近くの工務店。暗い照明に浮かぶ松原地区の先代檀尻を、児嶋宏さん(42)が眺めていた。

 獅子檀尻を台車から外して屋台として練り、お旅山への道を清める「露払い」を行うのが、松原伝統の役目。児嶋さんは中学1年から運行を担う「獅子舞保存会」に入り、会長も務めた。その後も檀尻に携わり続け、後厄を終える今年は儀式を取り仕切る「獅子係」の会長を任された。

 地元を離れた者も、普段は祭りから距離を置く者も、43になる年だけは同級生が集まり、獅子係を務める。さらに今年は檀尻の新調が予定され、児嶋さんにとっては一生に一度の祭りになるはずだった。

 「同級生24人で獅子係をやり切るのは大きな目標だった。本音はめちゃくちゃ悔しい」。それでも中止決定後、多くの人が声を掛けてくれた。「残念やったな」「つらかったな」。その一言一言に救われた。

 「逆に記憶に残って良かったかもな」。同級生の藤尾哲さん(43)が、役目を終えた先代檀尻に目をやる。児嶋さんも「(中止は)各地区のトップが相当悩んで決めたこと。仕方ないし、一生の思い出にはなりました」と話し、少し表情を緩めた。

    ◇    ◇

■大役終え分かることあった 妻鹿・取締委員長 藤田佳久さん

 「もう半周巻くか」「これでロープ1本分やな」。同市飾磨区の妻鹿県民交流広場で、祭りの運営役「取締」が屋台を先導するのぼりを製作していた。

 「うちは42~44歳の3学年で取締をやる。祭りは中止やけど、作業を1、2年生に引き継がなあかん。シデ棒やのぼりの作り方、屋台の運行ルートまで、やることは多いんです」

 妻鹿地区の取締委員長を務める藤田佳久さん(44)が、そばで見守りながら説明する。来年も運営役に残る選択肢はあったが、同級生19人で話し合い、後輩に引き継ぐことを決めた。

 幼少期から祭りに親しみ、高校1年で初めて屋台を担いだ。20~30代は好き勝手に祭りを楽しんだが、42歳で取締に加わると「1年生」と呼ばれ、必死に仕事を覚えた。元々目立ちたいタイプではないが、委員長を引き受けたのは、村に恩返しをしたかったからだ。

 「寝られへんくらいのプレッシャーがあるぞ」。先輩からの助言とともに屋台蔵の鍵を受け取ったのが、昨年の10月16日。それがこんな結末を迎えるとは、夢にも思わなかった。

 実はもう一つ、先輩から引き継いだ言葉がある。「(委員長を)務め終えてから、分かることがある」

 達成感か、同級生の絆か、それとも先人の思いか。「ほんまに分かることがあったんやと思う。3年目をやって、それを体験したかったかな」。本音の中に、無念さがにじんだ。

【あなたの地域の「祭りの流儀」募集】神戸新聞姫路本社では、姫路・西播地域の秋祭りに関する皆さんのエピソードを募集します。その地域ならではの文化や風習、“流儀”を教えてください。内容と連絡先を書き、メール(himeji@kobe-np.co.jp)、ファクス(079・281・9277)、ツイッター(https://twitter.com/himeji_seiban)でお寄せください。

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