姫路

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直筆原稿や愛用品が並ぶ会場。着物は羽織で隠れる部分に継ぎはぎがある=姫路文学館
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直筆原稿や愛用品が並ぶ会場。着物は羽織で隠れる部分に継ぎはぎがある=姫路文学館
「たけくらべ」原稿(日本近代文学館寄託)
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「たけくらべ」原稿(日本近代文学館寄託)
樋口一葉(日本近代文学館提供)
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樋口一葉(日本近代文学館提供)

 「たけくらべ」「にごりえ」などの名作を残すも、24歳の若さで世を去った作家樋口一葉(1872~96年)。その創作の背景をたどる特別展「樋口一葉 その文学と生涯」が、兵庫県姫路市山野井町の姫路文学館で開かれている。激動の明治期、因習に抗してもがく小説のヒロインたちの苦悩が、貧困を窮めた一葉自身の生涯に切なく重なる。(平松正子)

 一葉の幼少期は比較的裕福で、学校の成績も優秀だったが、「女に学問は不要」という母の主張により11歳で退学。その後、長兄の早世や父の事業失敗が続き、16歳で女戸主に。父の没後は母と妹を養いつつ、小説家を志した。

 今展は4部構成。第1部では直筆原稿や書簡から、一葉の文学世界を見渡す。94年12月の「大つごもり」発表に始まる「奇跡の14カ月」に、文学史上に輝く傑作を次々発表した一葉。そこに通ずるのは、社会の底辺に生きる女性たちへの共感だ。展示には「娼婦に誠あり」と記した残簡もあり、女性差別への憤りがうかがえる。

 第2部では、16歳から没するまで書き継いだ克明な日記などから、一葉自身の暮らし向きを伝える。小説では生計が立たず、新吉原遊郭近くで荒物や駄菓子を商うも行き詰まって、借金を重ねる日々。そんな困窮の中でも「錦衣を望まず、高殿を願わず、千載に名を残すために書く」などとつづり、作家としての誇りを持ち続けた。

 第3部では、学業断念後に通った歌塾「萩の舎(や)」のメンバーや小説の師・半井桃水、早すぎた晩年に切磋琢磨(せっさたくま)した「文学界」の同人ら、一葉をめぐる人々を紹介。第4部では、命を削って執筆した生前唯一の単行本「通俗書簡文」の原稿、没後に編まれた全集などを並べ、一葉が生涯訴え続けた社会の矛盾を現代に突き付ける。

 甲斐史子学芸課長は「一葉は遊女から上級官吏の妻までを描いたが、身動きの取れない明治女性の境遇に対し、一貫した問題意識を持って告発した。『にごりえ』は今で言うストーカー、『たけくらべ』は人身売買の話。隔絶した前時代の話じゃなく、現代の視点でとらえてほしい」と話す。

 会場内では、一葉と同時代を生きた姫路出身の教育者・野口幽香(1866~1950年)にまつわるパネル展も併催。日本で初めて貧しい子らのための保育施設「二葉幼稚園」を創設した幽香の理想からも、今の私たちが学ぶことは多い。

 11月23日まで。原則月曜休み。一般700円。同館TEL079・293・8228

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