傾斜地の災害対策工事費4000万円、地権者に請求へ 姫路市
2020/12/08 05:30
過去に崩落が起きた八丈岩山の傾斜地。既に応急工事が行われたが、真下には住宅が並ぶ=姫路市辻井8
姫路城(兵庫県姫路市)の北西に位置する「八丈岩山(はちじょうがんざん)」の傾斜地を巡り、姫路市は災害対策工事に要した4千万円超の費用を地権者20人に請求する方針を固めた。傾斜地が私有地であることから、「土地を安全に管理する法的義務を負う」と主張し、議会の承認を得た上で裁判所に民事調停を申し立てるという。近年、ゲリラ豪雨は頻発する傾向が強まっており、私有地の土砂災害対策は大きな課題となっている。(井沢泰斗)
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市によると、傾斜地は八丈岩山の裾野に位置する2カ所(同市辻井8)で、面積は計約5万6千平方メートル。2016年と翌17年の台風で一部が崩落し、土砂が市道へ流出した。市は地権者に対策を求めたが、十分な対応は行われず、その後も台風が来るたびに付近住民は避難を迫られた。
そこで、やむなく市が土砂の撤去や防護柵の設置などの応急工事を実施。担当者は「地元の要望もあり、住民の安全を考えると放置できなかった」とする。市は負担した工事費約4170万円の支払いを求め説明会を複数回開いたが、欠席する地権者も多く、合意に至らないため調停の申し立てを決断した。
県砂防課によると、この2カ所の土地は土砂災害警戒区域に含まれる。県が所有者に代わって急傾斜地対策を行う制度もあるが、過去に民間開発などの手が入っている場合は対象外という。同課の担当者は「危険な人工崖の工事に助成制度を設けている自治体も県内にはあるが、数は少ない。人工斜面には手が出せないのが実情」という。
さらに一方の土地は多くの法人や個人が共有し、意見集約が難しいことも壁となっている。地権者の一人という市内事業者によると、土地を購入したのは1973年。男性社長は「当時は付近に住宅もない山中だった。ただ、迷惑をお掛けしたことは申し訳なく、調停になればきちんと解決に向けて話し合いを進めたい」としている。