飛鳥時代から平安時代後期ごろまで兵庫県姫路市香寺町溝口に存在した古代寺院「溝口廃寺」(県指定史跡)を紹介する企画展が、同市四郷町坂元の市埋蔵文化財センターで開かれている。同寺の塔を支えた巨大礎石の写真が、原寸大に引き伸ばされて床に展示されるなど、栄えたいにしえの面影をしのぶことができる。(田中伸明)
溝口廃寺は約1350年前に創建され、450年ほど続いたとみられる。大規模な塔もあり、心柱を支えた礎石は長径2・9メートル、柱をはめ込む穴の長径も0・9メートルある。東西二つの塔があったという説もある。
2012年以降の発掘調査では、寺関連の遺構がさらに西側に広がっていることが確認された。
溝口廃寺から見つかった瓦も展示。「複弁八葉蓮華文軒丸瓦(ふくべんはちようれんげもんのきまるがわら)」は創建当初の製作とみられ、ハスをかたどった文様が美しい。また、軒平瓦(のきひらがわら)の唐草文様は、奈良県の興福寺や栃木県の下野(しもつけ)薬師寺の瓦と同一の型が使われたことが分かっている。興福寺は中臣鎌足(なかとみのかまたり)らを輩出した藤原氏の氏寺で、溝口廃寺と中央との密接なつながりが推測されるという。
同センターの南憲和技術主任(44)は「礎石の規模からみて、溝口廃寺には播磨屈指の荘厳な塔が立っていたと推測される。展示を通じ、往時を想像してほしい」と話す。
5月30日まで、無料。午前10時~午後5時(入館は同4時半まで)。原則、月曜休館。市埋蔵文化財センターTEL079・252・3950
