ただ1人入社の新人バスガイド 研修、努力重ね「お客さまに最高の笑顔を」
2021/07/14 05:30
奈良への修学旅行を想定した研修を前にルートなどを確認する尾谷葵さん(中央)=姫路市内
神姫バスグループの研修施設で6月30日、神姫観光(兵庫県姫路市)の新人バスガイド、尾谷葵さん(18)が同社社長らの前に立った。入社から3カ月間の研修成果を披露する場。尾谷さんは牛若丸と弁慶の物語を伸びのある声で暗唱し、「牛若丸」を歌いきった。
関連ニュース
<生老病支>がん治療による脱毛 患者会、布製のケア帽子作製 太子拠点「少しでも悩み軽く」
全国のお城ファン集まれ! 9月中旬「エキスポ」、姫路で初開催 世界遺産登録30年記念
琵琶の弾き語り、情感豊かに80人魅了 大藪旭晶さん「耳なし芳一」など4作披露 佐用
今春入社は尾谷さん1人だけ。先輩ガイドで先生役の北本有香さんとマンツーマンで研修を重ねてきた。発表は約5分間。北本さんは、教え子の暗唱を何度もうなずきながら聞き、無事発表し終わるのを見守っていた。
◇
尾谷さんは神戸市垂水区出身。高校卒業後は、空港で旅客機を手信号で誘導する仕事を希望したが、コロナ禍で求人がなかった。「歴史や地理が好きで、人と接することも好きな私にぴったりかな」。地元兵庫のバスガイドを目指した。
研修は観光地の歴史やルート、記念撮影や休憩ができる場所など覚えることだらけ。テキストは90冊あり「社外秘」の情報が満載。地元兵庫より、県外の観光地へ案内する仕事が多く、他社のガイドよりも必要な情報量は多い。尾谷さんは「頭にたたき込みます」と猛勉強した。
ガイドの醍醐味(だいごみ)は乗客とのふれあい。観光の知識以上に心構えが大事になる。
北本さんは研修で「修学旅行や遠足で子どもは騒いでいても、今日のガイドがどんな人か気になって見ている。最初のあいさつが大事。急な質問にもアドリブで返せるように」と助言した。6月下旬、小学生の修学旅行を想定した研修で奈良へ向かった。同乗した先輩ガイドたちは自作のオリジナルゲームを持参。尾谷さんは子どもの心をつかみ、楽しませる工夫を学んだ。
◇
成果発表に続き、尾谷さんに配属先の辞令が交付された。北本さんは「前向きで明るく、負けん気が強い。心が折れたこともあったはずだが、この日を迎えられた」とねぎらった。尾谷さんは「素直な気持ちで、最高の笑顔でお客さまに応対します」。今月1日から神戸の配属先で、若葉マークの新人ガイドとして第一歩を踏み出した。(段 貴則)