味と人柄で食べ盛り高校生を魅了 学食の名物夫婦

2021/09/19 05:30

姫路飾西高校の食堂を切り盛りする多田忠紀さん(左)、慶子さん夫妻=姫路市飾西

 姫路飾西高校(兵庫県姫路市飾西)の学生食堂には“名物”ともいえる夫婦がいる。約15年前から働く多田忠紀(ちゅうき)さん(80)、慶子さん(77)だ。2人が手作りする料理はどれも安くてボリューム満点。その味はもちろん、部活動の試合の応援に出向くなど優しい人柄も魅力で、生徒の心と胃袋をしっかりとつかんでいる。(山本 晃) 関連ニュース 【写真】食堂の壁に張られた卒業生らからの寄せ書きや写真 「からあげ定食」破格の380円 名物食堂が閉店 学生や常連に愛されて33年 SNSフォロワー千人以上なら“ガッツリ系”メニュー無料 市役所内の食堂


 部活動の早朝練習を終えた生徒が軽食を求めて次々と足を運ぶ。入り口近くには2人を慕う生徒が贈った色紙や写真が飾られている。「生徒や先生たちに支えられている。学校生活の思い出の一つになっていたらうれしいね」。2人が穏やかな表情を浮かべる。
 多田さん夫妻は親族が同市内の別の高校で学生食堂を営んでいたのがきっかけで、姫路飾西高から声が掛かった。現在はスタッフ数人と一緒に切り盛りする。
 うどんなどの定番料理は200円台から。人気の「日替わりランチ」は500円だ。石焼きビビンバなど手の込んだ料理も提供し、食堂の外まで行列ができることもあるという。
 「安くても、体にいいものを食べさせてあげたい」。そんな思いから冷凍食品やレトルト製品は極力使わず、ランチに使う唐揚げやトンカツは調理場で衣を付けて揚げる。生徒やスタッフの意見に耳を傾け、メニューを増やしてきた。
 生徒らの校外での活動も応援しようと、2人は野球部の対外試合にも足を運んできた。忠紀さんは「試合で活躍した生徒にサービスしてあげてね。成長を見るのが楽しみやな」と目を細める。
 昨年には同校放送部が食堂をテーマに映像作品を作り、コンクールなどに応募した。自身も頻繁に食堂を利用する部長の竹本愛凜々(ありり)さん(17)は「食堂の人たちにはなんでも気軽に話せる。ここは学校の憩いの場所」と笑顔を見せる。
 ただ、生徒から愛される食堂も新型コロナウイルスの影響を受ける。感染防止策として座席数は半減。机に立てられた仕切りには「黙食」と書かれた大きな張り紙が目立つ。
 「仕方ない面もあるけれど、やっぱりさみしいな」と慶子さん。にぎやかな声が戻ってくる日を、食堂のおっちゃん、おばちゃんは心から願っている。

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