飲食関連業、続く苦境 大幅減収、公的助成ほぼなく コロナ時短、休業影響
2021/10/29 05:30
日本各地の銘酒を扱う酒販店。飲食店の時短営業解除で、ようやく商品が動き始めたが…=姫路市白浜町乙
新型コロナウイルス禍に見舞われてから初めて迎えた衆院選。会食は感染拡大に拍車を掛けるとされ、2年弱の間、飲食店は幾度も休業や時短営業を余儀なくされた。取引業者も大きな影響を受けたが、協力金が出た飲食店と違い、公的な支援はほとんどない。今月22日には約9カ月ぶりに飲食店の営業制限がなくなったが、第6波の懸念が消えたわけではない。今、政治に望むのは何か。兵庫県姫路市内で酒、食材の卸売業を営む人たちに思いを聞いた。
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同市白浜町乙の酒類卸「イナチョー」の主力商品は高級な地酒や焼酎だ。調味料なども扱うが、酒類部門の売り上げの8割は飲食店頼み。当然ながら、コロナ禍で商いは暗転した。5代目の鰰澤長太さん(52)は「酒しか売っていなかったら、店がなくなっていた」と振り返る。店頭販売や通販に力を入れ、仕入れを抑えたものの限界があった。
昨年、最初の緊急事態宣言で酒の売り上げはほぼ消えた。宣言明けは盛り返したが、まん延防止の措置で振り出しに。その間、秋祭りの縮小で例年は計数百万円に上る各自治会の大量購入はゼロ、年末年始の需要もほぼなかった。祭りは今秋も同じ状況だ。時短緩和に続く今月の全面解除で商品は動きだしたが、昨年と今年の酒の売り上げは一昨年の3割程度という。
酒類販売業者には国や兵庫県の支援制度があるが、食品の売り上げがある同社は給付条件に該当しなかった。「数十万円もらっても焼け石に水やけどね」とぼやきつつ、国には業務用の酒販・食材店に対する一定の支援を望む。「家庭用とは需要が異なる。区分けした支援は必要」と訴える。
酒以外の卸売業者も、同じように苦しい。
市中央卸売市場のある魚類卸業者では高級魚が売れず、鮮魚の売り上げは3割弱減少。コロナ関連で国からの支援はなかった。担当者は「時短解除でも大人数が参加する会社関係の忘年会はまだ無理。終息までは元通りとはいかないだろう」とため息をつく。「浮き沈みが少ないのが食品業の特徴だが、コロナは特別だ」と、やはり飲食関連業への助成を求める。
県内産の高級牛肉を多く扱う精肉店の男性経営者も憤る。「飲食業にはいろんな業種が連なっている。俺らも一緒や」。緊急事態宣言下で売り上げは8、9割減少。無担保無利子とはいえ、政府系金融機関の融資制度を使ったため借入金も重くのしかかる。「中小の関連業者は支援からこぼれ落ちている。期日前投票に行ったけど、今までとは気持ちが変わったね」と話す。(上杉順子)
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