反復、韻、掛け言葉…「播磨国風土記」の言葉遊びに着目 研究に新風、英出身のパーマーさん

2022/08/24 05:30

播磨国風土記を全巻英訳したエドウィーナ・パーマーさん(本人提供)

 兵庫県立歴史博物館ひょうご歴史研究室編「『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』の古代史」が発刊された。その中で、海外の日本文学研究者の成果が注目されている。英国出身でニュージーランド在住の女性研究者エドウィーナ・パーマーさん(67)。同風土記にある地名の起源など口頭伝承の事例に関心を寄せ、多くの業績を上げてきた。(上杉順子) 関連ニュース 英「さらなる対日投資促したい」 貿易省閣外相、空母寄港で 釧路アイヌ協会に遺骨返還 英大保管の1体 日本との協力「黄金時代」 英国防相、空母寄港で


 「-古代史」刊行は、県立歴史博物館(姫路市本町)で2015年に開設された「ひょうご歴史研究室」の研究成果を市民向けに公表しようと企画された。同研究室のメンバーのほか、共同研究機関の県立考古博物館、連携する淡路島日本遺産委員会の委員ら17人で執筆。文献史学と考古学の双方から読み解いた38編の論考で構成した。
 このうち、監修も務めた坂江渉・同研究室研究コーディネーターが「『播磨国風土記』の資料的価値-口承の世界-」の項でパーマーさんの研究に言及している。「これまで播磨国風土記の口承性への関心は低かったが、パーマーさんの研究で注目すべき成果が出ている」と評価する。パーマーさんは同風土記の記述に、言葉の反復や韻、掛け言葉といった「言葉遊び」を見いだし、古代ギリシャなどの口承文学と国際比較した。坂江さんは「播磨国風土記研究の新境地を拓くもの」と称賛した。
 パーマーさんは英国ロンドン大で日本語・日本文学の学位、人文地理学の博士号を取得。来日し、神戸松蔭女子学院大助手、奈良女子大客員研究者、国際日本文化研究センター(日文研)客員教授も務めた。1990年から同風土記の研究に取り組み、調査で播磨も3度訪れた。2016年には全巻を英訳した学術専門書を世界で初めて刊行した。
 父親がロンドンっ子特有の、韻を踏んだり、ユーモアを持ってわざと別の単語を使ったりする俗語を使っていたことから、言葉遊びに親しみを持って育ったという。その関心が、同風土記を口承文芸という面から考察することに生かされている。
 「-古代史」は神戸新聞総合出版センターから刊行。四六判、272ページ。1980円。
 ◇姫路版では、パーマーさんが播磨国風土記の口承文芸について解説した寄稿を4回にわたり掲載します。
【播磨国風土記】元明天皇の時代、713年に朝廷の命を受け、716年ごろに編さんされた播磨国に関する地誌。一部欠損はあるが平安期の写本(国宝)が現存し、各地の産物や地形、伝説、地名の由来などが、神々の動向を通じて物語風に記されている。

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