兵庫県小野市上本町の交流スペース「おの夢館」の床をご覧になったことはあるだろうか? 学校の教室で使われる木製の机が、タイルのように並べられている。その数約60枚。約10年前、小野中学校(本町)校舎の建て替えで捨てられる予定だった机を活用。卒業生でデザイナーの小林新也さん(33)=同市=らがしゃれた床に仕上げた。展示用の棚も地元産のそろばん制作で出た廃材を利用しており、館内は創意工夫であふれている。(杉山雅崇)
播州刃物のブランディングなどを手掛けるデザイン会社「シーラカンス食堂」を運営する小林さん。大学卒業後、地元の活性化をと考えていた小林さんと仲間が目を付けたのが、老朽化が進むおの夢館だった。
管理の担当者や小野商店街会長の理解を得て、小林さんは建物の改修に乗り出した。カウンターや看板制作に取り組む中、母校小野中の建て替えで、備品が廃棄されることを聞いた。
「これは内装に使える」と確信した小林さん。市教育委員会は当初難色を示したが、事情を聞くと無償で備品を提供してくれた。
すぐに机の板を剥がして持ち帰った。実家の表具店で余った障子の骨組みを床に敷き詰め、タイルのように板を並べた。隙間には墨汁で染色したコンクリートを流して固めた。
それ以来、茶や黄色の机が適度に光る床は、同館の名物になっている。机に彫った落書きもそのまま残り、学校時代の思い出もよみがえる。また、個展などで使う棚は、そろばんに使う上質な木材で作った。知人のそろばん職人が廃材を提供してくれた。
入り口では、中学校の教材だった大型そろばんが来館者を迎える。小林さんは「机の床がいい状態で保たれているのがうれしい。仲間と一緒にわいわいやった成果」と笑顔で話していた。
