のこぎり屋根の播州織工房館「人と人の縁を紡ぐ場所に」 新装オープン1年、SNSでファンクラブも好調
2022/03/22 05:30
倉庫のスペースを削り、面積を広げた売り場=西脇市西脇
播州織の洋服や雑貨、生地を取りそろえるアンテナショップ「播州織工房館」(兵庫県西脇市西脇)が、新装オープンから1年を迎えた。地元出身の横江真琴館長は何度訪れても飽きない売り場づくりを工夫し、SNSを活用した播州織のファン拡大に挑戦してきた。立ち上げたファンクラブは会員数が約1800人に上り、「播州織への注目の高まりを感じる。地元の人にもぜひ立ち寄ってほしい」とアピールする。(伊田雄馬)
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同館は播州織工場の特徴であるのこぎり屋根を持つ、築約100年の木造建築を再生し、2007年にオープン。町づくり組織「西脇TMO」が運営し、市内を中心とした53業者の商品を販売するほか、交流拠点としても利用されている。
観光客を中心に月に千人以上が訪れ、毎年5月に開かれる「播州織産地博覧会(播博=ばんぱく)」では1日約7千人が来場するという。
横江館長は西脇市出身で、幼い頃から播州織に囲まれて暮らしてきた。絹織物を中心に扱う呉服店に勤めたこともあったが、「もっと手軽で丈夫で、みんなから親しまれている服を扱いたい」と故郷の地場産業に携わる道を選んだ。
2019年4月に館長に就任し、SNSを通じた情報発信に力を入れてきた。写真投稿アプリ「インスタグラム」には朝晩2回、訪れた客のスナップ写真や商品の情報を更新。「投稿内容を考えるのに1時間くらいかかる」と苦笑する。
自ら立ち上げた「播州織ファンの会」には手芸愛好家を中心とした約1800人が集まった。今年2月には会員の作品を店頭で販売し、その様子を「#(ハッシュタグ)播州織ファン作品展」としてSNSで発信。現実とオンラインを行き来しながら、幅広いファンを獲得している。
昨年2月の新装オープンでは、ジーンズやワイシャツなどを販売する紳士服売り場を新設。「男性物売り場がないのが長年の課題だった」といい、地元出身の歌手、トータス松本さんにちなんだ商品や男性用エプロンなども取りそろえる。
売り場奥のステージには、採光性の高いのこぎり屋根から光が差し込む。横江館長はこの場所を使い、月ごとに異なるブランドの商品を展開。「昔に比べ、一つ一つの商品が芸術作品のように洗練されている」。その魅力を最大限に引き出すため、レイアウトには細心の注意を払う。
生産現場の雰囲気を伝えるため、売り場には旧式織機を置く。「ガッチャン」という音はタイムマシンのように、工房館を在りし日の播州織工場に引き戻す。「縦の糸と横の糸、人と人の縁を紡ぐ場所であればいい」。どこかで聞いたフレーズに「中島みゆきさんの『糸』みたいですね」と返すと、「ツアー客の前で歌うこともあります」と笑った。