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補助人工心臓を手に心境を語る山本秀樹さん。生きる希望を抱き続ける=加古川市平岡町新在家3、やまもと歯科
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補助人工心臓を手に心境を語る山本秀樹さん。生きる希望を抱き続ける=加古川市平岡町新在家3、やまもと歯科

 臓器移植を希望する患者は日本で約1万4千人。その中には、臓器提供者(ドナー)が現れるのを何年も待ち、移植が間に合わずに亡くなるケースも多い。移植目的の海外渡航も多大な費用がかかる上、「手術に必要な臓器は自国内で確保すべき」という世界的な流れに反しかねない。脳死した人からの臓器提供が可能となった臓器移植法施行から20年。待機患者は何を思い、どんな日常を過ごしているのか。脳死者の心臓を移植することでしか治療できない重い心臓病を患い、補助人工心臓(VAD)で命をつなぐ男性を訪ねた。(佐藤健介)

     ◇   ◇

 加古川市の歯科医院。患者に笑顔でいたわりの言葉を掛け、診察を終えた歯科医師の山本秀樹さん(53)がVADを載せた台車を引き、歩いて移動する。VADの管は山本さんのへそ付近から皮膚を貫通して体内に入り、機能の弱った心臓を動かしている。

 「1回死んだような病気をしたので、患者の不自由さがより理解でき、診療も丁寧になった。ドナーが現れるかは天命。今はただ、患者を助けるために働きたい」と前向きに話す。

 心臓の筋肉が弱くなって全身に血液を送ることができなくなる「拡張型心筋症」を発症したのは2007年。その後も診察などによる疲労蓄積で悪化し、16年春には心肺停止に陥った。17日間に及ぶ昏睡(こんすい)状態の末に意識を取り戻したが、全身はほぼ動かず、言葉も出ない。心臓移植しか助かる道はないと知り、日本臓器移植ネットワークの移植待機者登録を決意した。

 生命維持に向けてVADも必要に。ただ、保険適用の条件となる装着前検査は約3カ月かかり、体中を調べられた。「検査をクリアしなければ何百万円も費用がかかる。検査を終えるまでに私の心臓が持つのか、時間との闘いだった」と当時の不安を振り返った。

 VADの装着手術を終え、16年8月に待機者登録。いつ何時でも容体が急変しうるという恐れも抱きつつ、ドナーを待つ。

 日常生活はどこへ行くのでもVADが手放せない。重さは約6キロもあり、1日約5千~2万歩のウオーキングで体力を維持する。

 VADの管が体内に入る部分を清潔に保って感染を防ぐため消毒は欠かせず、入浴時も湯船につかれない。抵抗力が弱まっており、感染症がありうる刺し身や肉の赤身はご法度で、魚も肉もかりかりに焼いて菌を死滅させる。

 VADの機械トラブルなどに備え、妻か長女が常に介助する。気が抜けない暮らしにも明るさをもたらそうと、仕事の合間に高野山や比叡山など積極的に出掛ける。

 「倒れていたり、グッタリしている場合は速やかに119番を」「強くぶつからないようお願いします」などと記したカードも自作し、VAD本体の見えやすい場所に掲示している。

 移植待機者の実態を知ってもらいたいと、インターネットの会員制サイトなども活用。日常を自身のフェイスブックで紹介するほか、同じ待機者とも交流する。山本さんは「ドナーを待つ人はどんどん増えているが、臓器移植に関する情報が少ない。微力だが、地道に声を上げるしかない。生きていれば、どんなチャンスもあると思うから」と語る。

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