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インフルエンザの集団感染が発生した養護老人ホーム「北淡荘」=淡路市育波
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インフルエンザの集団感染が発生した養護老人ホーム「北淡荘」=淡路市育波

 7人が死亡した兵庫県淡路市の養護老人ホーム「北淡荘」のインフルエンザ集団感染問題で、高齢者施設などが発症者以外への感染予防のために行う投薬を巡り、費用負担のあり方が課題として浮上している。同施設は、県の助言を受けてから入所者に8日間投薬していなかった。施設の嘱託医は、取材に「コストの問題など、介入できない部分もある」と答えており、保険適用外の全額負担が、投薬を遅らせる恐れを生むとの声も上がっている。(篠原拓真、内田世紀、前川茂之)

 北淡荘では21日までに、入所者と職員計193人中74人が発症。11日以降に2階の入所者7人が死亡し、インフルエンザとの因果関係が否定できない死亡者は3人だったという。

 県疾病対策課などによると、県洲本健康福祉事務所が11日に立ち入り調査をした際、投薬による感染拡大予防を助言したが、施設は職員のみに投与。18日に再び、入所者への投与を指導した。

 予防投薬を巡って、国の示す「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」は「適切なリスク評価のもと、早期の抗ウイルス薬予防投薬なども考慮されうる」と明記。厚生労働省の担当者は「集団感染があっても、リスク評価をして施設に判断してほしい。副作用の問題とともに、保険適用されないこともあるので、強制はできない」と話す。

 また、県も「一律に予防投与すべきとは厚労省のマニュアルにも書いておらず、患者や施設の状況などを考慮しながら医師と相談して決める問題だ」とする。

 ただ現場では、投薬費用に対する負担感は重い。薬の投与には、入居者や家族の理解を得る必要があり、3千~5千円ほどの費用は保険適用外のため全額自己負担となっている。

 県内で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「きらくえん」の土谷千津子理事長(51)は、施設の嘱託医や保健所などと相談して投薬を判断するといい、費用は「申し訳ないが、個人負担をお願いしている」という。

 また、神戸市内のある病院では、過去に病棟全体に予防投薬を行い、患者や医師ら60人ほどにタミフルを投与した。こちらは病院が費用負担するが「金銭的な負担は大きい」とする。

 北淡荘の嘱託医も取材に対し、「予防投与をした方がいいが、経営の事情などが絡む中でそれ以上ははばかられた」と答えており影響を与えた可能性がある。

 しかし、厚労省の担当者は「予防投薬は治療ではなく、あくまでも予防の一環」とし、保険適用の可能性を否定。県の担当者も「副作用があり、全ての人に万全の対策ではない。否定的な見解もある中、県が独自に費用を補助することは考えられない」とする。

 神戸大病院感染症内科の岩田健太郎診療科長(47)は「治療と予防を分けるのは時代遅れ。医学的な効果はあるとされている。保険適用すべき」と指摘。「感染症対策の専門家がいる医療機関と施設のネットワーク構築が必要」と提言する。

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