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国内初の新型インフルエンザ発生を受け、街中はマスク姿の人であふれた=2009年5月18日、JR三ノ宮駅
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国内初の新型インフルエンザ発生を受け、街中はマスク姿の人であふれた=2009年5月18日、JR三ノ宮駅

 神戸市で2009年5月、国内初の新型インフルエンザ発生が確認され、全国に感染が広がってから10年がたった。「濃厚接触者」という専門用語が飛び交い、多くの人がマスクを大量購入。学校や施設の臨時休業が相次ぎ、神戸まつりのメーン行事も延期されたあの騒動をどう振り返ればいいのか-。新型インフルエンザ対応の当時と今を検証した。(霍見真一郎)

 10年前、初の「新型発生」は過剰ともいえる反応を引き起こした。感染を抑制するワクチンがなく、毒性の強弱もはっきりしなかったからだ。その後の調査で「弱毒性」と判明。現在は一般的な季節性インフルエンザ(A型)として扱われ、ワクチンも開発されている。

 「騒ぎ過ぎ」という批判もあったが、医療機関や行政はより毒性の強いインフルエンザや伝染病に備え、教訓をくみ取ってきた。

 「最初の24時間で、隔離は限界になった」。当時、神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)で患者に対応した川本未知医師が振り返る。

 初日に50人以上が診察に訪れ、翌日未明までに40人近くを新型と診断。空気が外に流れない特別室に加え、別の病棟も使って隔離に努めた。しかし4日目までに患者との濃厚接触者は2千人を突破し、厚生労働省は封じ込めの指示を解除した。

 神戸市は、初期の混乱を「痛恨」とする。市内48カ所の診療所で法定の感染症発生動向調査を毎週実施していたが、新型の患者をつかめず感染が広がり、対応も後手に回ったからだ。

 反省を基に、市は感染症の早期探知地域連携システム「神戸モデル」を構築。09年秋から学校や保育所、高齢者施設など約3千カ所をつなぎ、1週間に感染症患者が2人以上出れば報告してもらうようにした。17年夏には、法定調査より先に保育園からA型インフルエンザ発生が伝えられ、素早い対応につながった。同市の尾崎明美健康危機管理対策担当課長は「感染症発生を早期に捉え、拡大防止に全力を挙げる」と話す。

 兵庫県は、当時難しかった対応として、学校や公共施設の休業要請を挙げる。県疾病対策課の広田義勝副課長は「法的根拠はなかったが、感染拡大防止のため断行した」と語る。その結果、県内全ての小中学校や高校が臨時休校に。認可保育所も県など自治体による要請で多くが休業した。

 今後の判断を助けるため、県などの働き掛けで、13年4月施行の「新型インフルエンザ対策特別措置法」に、休業要請の根拠となる条項が盛り込まれた。

 最も大きな課題は正確な情報発信だ。会員制交流サイト(SNS)が普及した現在は、誤った情報が拡散し、パニックを引き起こす恐れが増している。

 10年前、県の電話窓口には最大で1日1万件を超す相談が入り、神戸市の電話も鳴り続けた。「置いたとたん鳴った」と市職員は振り返る。そんな中でも、県などは感染した生徒の高校名を公表せず、情報公開の在り方を巡って議論も起きた。

 混乱を踏まえ、県は患者情報について公表基準を設けた。しかし、関係者は「怖いのはSNSで間違った情報が流れること」と指摘。「情報発信の仕方は、国と相談しながら模索するしかない」と打ち明ける。

【国内初の新型インフルエンザ】2009年5月16日、神戸市内の高校生から確認。感染は3日間でピークを迎えた後に減少し、県は6月3日に「ひょうご安心宣言」を出した。厚生労働省によると、全国の感染者数は10年3月23日までに約2千万人にまで拡大し、死亡割合は10万人当たり0・16人。同省は11年3月末、一般的な季節性インフルエンザとして扱うことを通知した。現在、同省が急激な感染拡大を警戒する新型インフルエンザは強毒性の鳥インフルエンザ1種類で、約1千万人分のワクチンを備蓄している。

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