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 神戸市医師会は、要介護者が延命治療や療養場所について事前に意思表示できるシートの作成を進めている。病気の終末期や急変時に備え、ケアマネジャーらが希望を聞き取り、情報を集約したQRコードを発行。救急隊や救急病院などが専用端末で読み取ることで、本人の意識がなくても意思を確認できる仕組みを目指す。医師会は8月中に神戸市に提案する方針。市は導入の可否を含め本格的な検討を始める。

 シートでは延命と苦痛の緩和のどちらを優先するかや、病院か住み慣れた場所のどちらで治療を受けたいかを明確にする。本人が意思を決められない場合は、複数の質問への回答で人生観や価値観をおおまかに把握し、家族らが意思を推定できるようにする。

 これらの情報は入退院や服薬の記録とともにデータ化し、本人や家族が所持するQRコードを読み取れば閲覧できるシステムを検討する。

 シート作成には、希望していない救急搬送を避ける狙いもある。望まない搬送や蘇生を防ぐ取り組みは、全国各地で広まりつつある。総務省消防庁の昨年の調査では、全国728の消防局や消防本部のうち45・6%が、患者側から蘇生を拒否された際の対応を定めていた。そのうち約3割は、「医師からの指示など一定の条件の下に、心肺蘇生を実施しない、または中断できる」としている。

 神戸市消防局は現在、心肺停止したすべての終末期患者に対し、救急隊が蘇生措置を実施して医療機関へ搬送している。

 だが、市医師会が市消防局や救急救命センターのある病院に調査したところ、「本人が搬送を希望していたのか疑問に思うことがある」「事前に意向を確認しておくことが重要」といった声が寄せられた。

 内閣府の調査によると、55歳以上の約55%が自宅で最期を迎えたいと望む。一方、2017年に亡くなった約134万人のうち、自宅で亡くなったのは13・2%の約17万7千人で、在宅死の実現が難しい現状が浮き彫りとなっている。

 厚生労働省は、終末期の治療希望などを事前に家族や友人らと話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の啓発に力を入れる。千葉県松戸市では15年度から4年間、高齢者らの希望に沿った搬送や終末期の治療を目指す「ふくろうプロジェクト」が展開され、高齢の人や家族らが意思を記入するシートを導入した。

 神戸市医師会でシートの作成に携わる中神クリニック(同市西区)の中神祐介院長(44)は「ACPの扉を開き、家族で人生の最終段階を相談するきっかけになれば」と話す。(田中宏樹)

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