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サイト上で仕事完結 クラウドソーシング市場拡大中

2017.11.01
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2日間で約130人が参加したクラウドソーシングのセミナー=神戸市中央区雲井通5

2日間で約130人が参加したクラウドソーシングのセミナー=神戸市中央区雲井通5

 仕事の受発注から納品、決済までをインターネット上で行う「クラウドソーシング」が、兵庫県内でも広がっている。受注側は自分の都合に合わせて仕事量を調整でき、依頼主も効率よく仕事を発注できる利点があるからだ。人手不足が深刻化する中、新たな働き手を確保する観点からも注目されている。(大久保斉)

 神戸市垂水区の女性(41)は、クラウドソーシングでライター業を始めた。育児、美容関連を中心に月20本の記事を情報誌などに提稿し、月15万~20万円を稼ぐ。1カ月の後半の2週間を仕事に充て、小中学生の子ども3人が登校した後、午前10時~午後4時に自宅で執筆する。夏休み中は仕事量を減らす。

 ライターの経験はなかったが、高校時代に習得したタイピングで文字入力の速さに自信があり、執筆を思い立った。「自分の生活パターンに合わせて仕事をコントロールできるのが利点」と笑顔を見せる。

 神戸市が8月末に開いたクラウドソーシングのセミナーには、主婦やパート、会社員ら131人が参加した。建設コンサルタント会社に勤める大阪市の男性(23)は「今の職場はプライベートの時間がないほどの残業漬け。自分のペースで働けるクラウドソーシングに興味があった」という。今の勤務先を年内にも退職し、特技を生かしてイラストレーターとして独立するつもりだ。

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 クラウドソーシング仲介大手、クラウドワークス(東京)の受注者の県内登録者は約3万8千人(8月末時点)と、2014年の6・3倍に増えた。受注者は、フリーランスの個人が多いが、企業の登録も目立つ。ITコンサルティング会社のガイアシステム(神戸市中央区)は昨年、ホームページ作成など20件の仕事を請け負った。「仕事を得るための営業経費がかからず、受注から入金までの期間も半分で済む」と、ITマーケティング事業部の北角裕己リーダーは話す。

 依頼主も増加の一途だ。クラウドワークスの県内登録者は企業や自治体など約1850社・団体(8月末時点)で、14年から2・8倍となった。

 その一つ、加古川市は15年度から、ゴミの減量案やふるさと納税のパンフレット作成など計5件でクラウドソーシングを活用した。ゴミ減量案の場合、広報誌による募集では30点の応募しかなかったが、クラウドソーシングで募ったところ半月で318点が寄せられた。伊藤淳平政策推進係長は「幅広い人から多様なアイデアを集めることができた」と話す。

 依頼主としても登録するガイアシステムは昨年、パンフレットのデザイン作成で15件を発注した。北角リーダーは「当社が不得手なデザインの分野を補完できる。人手不足でデザイナーの確保が難しく、適材適所で外部人材を活用できる利点は大きい」と指摘する。

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 クラウドソーシングは、特定の登録者と契約して仕事を進める「プロジェクト形式」と、不特定多数の登録者から作品や提案などを募り、採用する「コンペ形式」の二つに大別される。

 関係者によると、コンペ形式では集まった成果物を不採用にしておきながら、依頼主がそのまま流用するケースがあったという。また、仕事を請け負ったライターが、特定テーマの情報を集めた「キュレーションサイト」の一部記事で盗用や誤りを犯していたことが判明するなど、受注、発注の双方にモラルが問われる事案があった。

 仲介会社の中には、受注者の技能を高めるセミナーを開くほか、不正な受発注を取り締まるシステムを導入するところも出てきた。働き手の質向上と健全取引に向けた取り組みが、クラウドソーシング市場の成長を左右しそうだ。

【クラウドソーシング】クラウド(群衆)とソーシング(業務委託)を合わせた造語。インターネット上のサイトを通じて、仕事を委託したり請け負ったりするサービス。矢野経済研究所(東京)によると、クラウドソーシングの国内市場規模は950億円(2016年度)。20年度には2950億円に拡大する見込みという。