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「お前、誰やねん」無名&赤字社長救った生パスタ 今やロイホで全国拡大

2018.05.27
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約30種類から生パスタを選べるレストラン「DAN-MEN」。2カ月ごとに開くパスタ会で、出雲社長が自ら麺を手打ちする=淡路市生穂新島

約30種類から生パスタを選べるレストラン「DAN-MEN」。2カ月ごとに開くパスタ会で、出雲社長が自ら麺を手打ちする=淡路市生穂新島

「DAN-MEN(ダンメン)」で人気の「ペスカトーレ」(淡路麺業提供)

「DAN-MEN(ダンメン)」で人気の「ペスカトーレ」(淡路麺業提供)

「DAN-MEN(ダンメン)」で人気の「牛スジ肉のラグー・チーズ添え七味風味」(淡路麺業提供)

「DAN-MEN(ダンメン)」で人気の「牛スジ肉のラグー・チーズ添え七味風味」(淡路麺業提供)

 赤字に苦しむ兵庫県淡路島の老舗うどん・そばメーカーを救ったのは、もちもちとした食感で知られる「生パスタ」だった。5代目社長がうどんづくりのノウハウを生かして開発。一から販売先を開拓して、いまやファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を含む全国2千軒で提供されるまでに拡大した。強みを生かして新市場を切り開いた淡路麺業(同県淡路市)の道のりをたどる。

 同社は1909(明治42)年創業の麺メーカー。うどん、そばなどを製造し、島内の商店に販売した。が、逆境に追い込まれたのは皮肉にも、地元が待ち焦がれた明石海峡大橋の開通だった。98年4月に完成すると、大手メーカーの低価格品に席巻されたのだ。

 出雲文人社長(40)は大学を卒業後、京都の食品会社を経て、父が経営する淡路麺業に2005年に入った。赤字の家業に飛び込んだ出雲はまず、高付加価値商品の開発に取り組んだ。ラーメンスープやプロテイン、がんの抑制効果があるとされるタモギタケの粉末を練り込んだうどんなどを商品化したが、いずれも不発に終わった。

 万策が尽き、事業縮小も考えたころ、「麺屋さんなら、パスタをやればいい」という旧知の経営者の言葉が頭をよぎる。現物や教本を取り寄せて試作を始め、評判店を食べ歩いた。たどり着いたのが、うどんの製造技術が応用できる上、あまり世に出回っていなかった生パスタ。分量をミリグラム単位で修正し、約500種類の試作を重ねた。

 5カ月ほどでサンプルを完成させたが、今度は販路開拓の壁にぶつかった。既存の顧客に生パスタが受け入れられるとは考えにくく、イタリア料理店は島内でも数えるほどだったからだ。妙手はなく、「タウンページ」の兵庫県、大阪府で発行される全エリア版を手に入れ、電話営業に乗り出した。

 「お前、誰やねん」「忙しいわ」。最初はけんもほろろに断られたが、100軒に1軒の割合で「無料ならサンプルを見てあげてもいいよ」という店が現れた。シェフの間で評価がじわじわ浸透し、初納品から約1年半後に納入先は150軒に。10年3月期に12年ぶりに黒字転換し、15年末には生パスタの生産能力を6倍に引き上げる工場を新設。今年4月で納入先は2千軒に達した。ロイヤルホストのほか、著名シェフのイタリア料理店「セストセンソ」(東京)なども同社の生パスタを使う。

 生パスタをメインにした直営レストラン「パスタフレスカ DAN-MEN(ダンメン)」も工場に併設した。7種類のコースが楽しめる2カ月ごとの「パスタ会」は特に人気で、駐車場には他府県ナンバーの車も目立つ。

 出雲氏は「生パスタを売って終わりにしたくない」といい、プロ向けの講習会を開くほか、会員制交流サイト(SNS)を用いた宣伝ノウハウを伝えるなど包括的な支援体制を整える。こうした取り組みを自ら「繁盛支援業」と呼ぶ。

 直営店では地元の食材を積極的に使い、生パスタの原料に適したデュラム小麦の生産を地元農家に委ねて全量を買い取る。出雲氏は「麺屋として100年以上、島で商売をしてきた。会社を大きくして地域にも還元していくのが目指すべき姿だ」と語る。(綱嶋葉名)