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“農業版ISO”の認証取得 兵庫県、普及へ研修強化

2018.09.11
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農場の安全管理を見直した丹波たぶち農場の田渕真也さん=篠山市口阪本

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神戸新聞NEXT

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 農業生産の持続性を高めるため農家の安全や環境保全などに関する取り組みを定めた「GAP(ギャップ、農業生産工程管理)」。その認証取得が東京五輪・パラリンピックへの農産物提供要件となり、大手流通チェーンが生産者に求めるなど国内で動きが広がる。ただ取得には数十万~100万円前後の費用がかかるため、兵庫県は「取得よりも、まず実際に取り組むこと」と農家や指導者育成の研修を強化し、実践の拡大を図っている。(山路 進)

 GAPは、農作業の安全や環境保全、労働環境などに配慮した取り組みを指す。その取り組みを第三者が証明するのが認証制度で、製品の質や安全性などに関する企業向けの国際認証「国際標準化機構(ISO)」の農業版といえる。

 国内の認証制度は欧州発祥の「グローバルGAP」、日本GAP協会が運営する「アジアGAP」「JGAP」の三つ。いずれも食品安全▽環境保全▽労働安全▽人権保護▽経営管理-の5分野、100~200ほどの項目を点検し、認証される。中でもグローバルGAPは欧州への輸出条件とされ、世界の認証経営体数は約19万件に上る。

 国内でも、飲料大手日本コカ・コーラが茶原料の生産者にGAP認証取得を求め、茶生産が盛んな静岡、鹿児島県のアジアGAP、JGAPの認証取得数は計約2500件と全国の取得者の約6割を占める。同社は2年後には果実や野菜にも対象を広げる計画だ。流通大手イオンも、プライベートブランド商品の全調達先のGAP認証を目指すなど、流通業界でGAPの需要が高まりつつある。

 だが、取得には審査料に加え、事前研修やコンサルタント会社のチェックも必要で、初年度の費用は数十万~約100万円。翌年以降も更新などで年10万~数十万円がかかり、小規模農家には大きな負担だ。

 このため兵庫県は、認証取得は取引先からの要請など経営面で各農家が判断すべきとする。一方、県農産園芸課の担当者は「農家の競争力強化や安定経営には重要な取り組み」と強調。GAP普及に向け、指導役の県農業改良普及センターやJAの職員らを対象に勉強会を開催。今年からは農業者向け研修会を始めた。

 JGAP指導員の資格を持つ県農業協同組合中央会の男性(29)は、生産者への普及を進める。洲本市で7月に開かれた研修会では、取り組む内容について「食品衛生法や農薬取締法、労働安全衛生法など法律で定められたことばかり。当たり前のことをするだけです」とし、「旅行の準備のように日ごろの作業を見直してほしい」と呼び掛けた。

 参加した同市の農業の男性(42)は「取引先から求められたことはないが、取り組む必要性は感じた。少しずつでもやっていきたい」と話していた。

◇認証取得費用、県が一部支援◇

 兵庫県は本年度、GAP(農業生産工程管理)の取り組み拡大を進める一方で、認証取得時の費用を支援する制度も始めた。

 審査費用やコンサルタント料、設備改修費などを補助する。支援上限額は、グローバルGAPが29万5千円、アジアGAPが15万円、JGAPが13万円。

 取得初年度を含め認証を3年以上維持することが条件。1年ごとにかかる更新費用は対象外。本年度の支援件数は20経営体程度を予定している。県農産園芸課TEL078・362・3445

◇「職場の安全、見直す契機に」 篠山・丹波たぶち農場◇

 「経営効率化や職場の安全管理を進められた」。今年2月、特産の黒大豆でグローバルGAP(農業生産工程管理)の認証を取得した丹波たぶち農場(篠山市)の田渕真也理事(42)はGAPの意義を話す。

 同農場は、篠山市内のほ場約70ヘクタールで、10人の従業員とともにコシヒカリなどの主食用米や黒大豆などを栽培。コメの無農薬、減農薬栽培で、兵庫県認証食品も取得している。

 GAP認証の取得に動き始めたのは昨年春。夏から、コンサルタント会社の担当者と厚さ数センチの資料を基にほ場から事務所の帳簿まで、218の点検項目をチェック。生産や従業員の管理などの見直しを進めてきた。

 「いいものをたくさん、と農産物へのこだわりは従業員を含め意識は高かった」と田渕さん。だが「農薬や堆肥の在庫、従業員の労務管理は足りていなかった」と振り返る。

 認証取得の過程で週1回30分~1時間、従業員を集めた会議をスタート。フォークリフトに乗るときに不可欠なヘルメットを座席の脇に備え付けるなど安全管理も見直した。健康管理、クレーム対応などリスク管理の徹底につなげられているという。

 田渕さんは「GAPは、農薬についても使用の有無ではなく管理を見るもの。事業者としてのレベルが問われている」と話す。

【GAP】「グッド・アグリカルチャル・プラクティス」の略。グローバルGAPの認証数(今年6月末)は世界で約19万件、国内は約630件で約5年前の4倍超に急増。兵庫県内には少なくとも6経営体がある。JGAPとアジアGAPの認証取得数(同3月末)は国内で計4200件、都道府県別では静岡の1813が最多で兵庫は15件。昨年、畜産業対象のGAPもできた。