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復興支援で誕生 神戸「ものづくり工場」が20年

2018.09.23
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修学旅行でものづくり工場を訪れ、入居企業の経営者の話を聞く中学生ら=神戸市兵庫区和田山通1

修学旅行でものづくり工場を訪れ、入居企業の経営者の話を聞く中学生ら=神戸市兵庫区和田山通1

事業化に取り組む「ロータス金属」を手にするロータス・サーマル・ソリューションの井手拓哉社長=神戸市兵庫区和田山通1

事業化に取り組む「ロータス金属」を手にするロータス・サーマル・ソリューションの井手拓哉社長=神戸市兵庫区和田山通1

 阪神・淡路大震災をきっかけに誕生した国内最大の公営賃貸工場「神戸市ものづくり工場」(神戸市兵庫区)が、1998年の運営開始から今年で20年を迎えた。被災した中小企業の復旧・復興を支援するために建設された賃貸工場には、現在、被災企業だけでなく、大手の系列や最先端のベンチャーなど多彩な企業が集積。互いに、受発注や技術支援などを通じて結び付きを強め、その魅力を高めている。(長尾亮太)

 今月21日、同工場内に中学生のにぎやかな声が響いていた。初めて修学旅行生を受け入れ、岐阜県各務原市から生徒107人が工場見学に訪れた。

 「震災で大きな被害を受けたときは、どんなお気持ちでしたか」

 生徒の率直な質問に、開設当初から入居する神戸プラスチックの田渕信幸社長(67)が丁寧に答えた。

 「食べるためには働かなければならない。いち早く事業を再開しなければ、という思いでした」

 同社が主に手掛けるのは、発電所の保守点検用機械の部品。開設当初に入った同工場は、賃借料が安く抑えられていたこともあり、厳しい中で設備投資を続けることができた。

 多種多様な企業が一カ所に集まっているメリットも大きい。田渕社長は「この工場の中では、業者間の受発注が盛んだ。伸び盛りの企業も入居することで、さらに受注が増えている」と話す。

 同工場は、神戸市が約103億円を投じて「復興支援工場」の名称で建設。98年から入居が始まった。

 約1万8千平方メートルの敷地には、鉄筋コンクリート造り5階建て4棟があり、延べ床面積は2万6千平方メートル。現在、大手系列やベンチャーなど102社が入居し、うち38社が被災企業だ。

 多彩な事業者が集積するようになったのは、当初「被災した神戸市内の小規模業者」に限っていた入居要件を、入居率を一定以上に保つため段階的に緩和してきた経緯がある。

 まず2004年、不況の影響で入居率が低迷したことを受けて被災していない事業者に門戸を開放。06年、さらに入居率が落ち込むと市外の事業者を加え、09年には大企業も対象とした。

 開設当初から入居して事業を続けている栗山プレス工業所の栗山崇社長(70)は「入居率を高く維持する施策は、既存の入居企業にもプラスに作用した」と分析する。

 新たな入居企業の中には、今後大きな飛躍が期待できるベンチャーもある。特に注目を浴びるのが、大阪大発ベンチャーのロータス・サーマル・ソリューション(大阪市)だ。

 同社は16年、同工場内に開発拠点を設置。パソコンや電気自動車など、さまざまな電子機器が高温になるのを防ぐ素材「ロータス金属」の研究開発に取り組んでいる。

 井手拓哉社長(38)は「私たちベンチャーは設備を自前で十分にそろえられないが、工場内にいる多くの金属加工業者らに助けてもらえる」と話し、同工場の魅力を強く感じている。

 多彩な企業が一カ所に集まり、受発注などを通じて結び付くことが、同工場に新たな魅力を生み出している。

 井手社長は言う。「このような魅力を持つものづくり専門のインキュベーション施設は、関西では他に見当たらない」