ひょうご経済プラスTOP 経済 医療産業びと(3)DNA合成ベンチャー「シンプロジェン」 菅原潤一さん(34)

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医療産業びと(3)DNA合成ベンチャー「シンプロジェン」 菅原潤一さん(34)

2018.11.17
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微生物に作らせたクモの糸を手にするシンプロジェンCEOの菅原潤一さん=神戸市中央区港島南町2

微生物に作らせたクモの糸を手にするシンプロジェンCEOの菅原潤一さん=神戸市中央区港島南町2

 円筒状に巻き上げられた糸が、陽光に照らされて柔らかな光沢を放つ。手にするのは微生物に作らせたクモの糸だ。「石油に頼らず、生き物を使ってものづくりをする時代が近づいてきた」とバイオベンチャー企業、スパイバー(山形県鶴岡市)取締役の菅原(すがはら)潤一さん(34)は目を輝かせる。

 社会で役立つ物質を生き物に作らせる「合成生物学」。ものづくりの新たな形として注目を集める。スパイバーはこの分野で国内を代表する新興企業の一つだ。「クモ糸の粘り強さは鉄の340倍。この夢の素材を安く大量に届けられれば、世の中は変わる」

 例えば鋼鉄製の車で、車体の素材をクモ糸の繊維に置き換えれば、衝突時の衝撃を独特の粘りで吸収する上、車体の軽量化によって走行中の二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えられるという。すでに試験設備で作った繊維で、自動車部品メーカーが製品開発に乗り出した。

 ただ、普及には生産コストの高さが壁となって立ちはだかる。そこで今秋、DNAづくりの独自技術を持つ神戸大発ベンチャー「シンプロジェン」に出資し、関連会社にした。クモの糸の成分を作る微生物にもっと働かせるため、設計図となるDNAの操作で微生物の改良を目指す。菅原さんも同社の最高経営責任者(CEO)を兼ねる。

 シンプロジェンがDNAの供給先として照準を定めるのは、合成生物学の分野にとどまらず、遺伝子治療を提供する医療機関や、抗体医薬品メーカーなど幅広い。「世界に負けないDNA作りの拠点を来年にも神戸・ポートアイランドに設けたい」と力を込める。

 大学の授業で「環境や食料、エネルギーなど21世紀に世界が抱える課題を解決できるのはバイオテクノロジーだ」と聞き、大学在学中の2007年に研究室の先輩らとスパイバーを創業した。夢の実現に向けた歩みはまだ始まったばかりだ。(長尾亮太)

【メモ】菅原さんは幼稚舎(小学校)から大学院博士課程まで慶応義塾で過ごす。妻子を妻の地元である神戸市に残し、スパイバーが拠点を置く山形県鶴岡市に単身赴任。神奈川県鎌倉市出身。シンプロジェン(神戸市灘区)は、DNA合成技術の事業化を目指し、神戸大の研究者らが2017年2月に設立した。