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医療産業びと(4)米国系製薬会社「日本イーライリリー」吉川彰一さん(56)

2018.12.05
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日本イーライリリーで医薬品開発をけん引する吉川彰一さん=神戸市中央区磯上通5

日本イーライリリーで医薬品開発をけん引する吉川彰一さん=神戸市中央区磯上通5

 認知症の3分の2を占めるといわれる「アルツハイマー型」。高齢化で患者は急増する一方、進行は遅らせられても、根本から完全に治療する薬はいまだに存在しない。「神戸から革新的な新薬を生み出したい」。1965年以来、神戸に本拠地を置く米国系製薬会社の日本イーライリリーで研究開発部門を率いる。

 糖尿病薬で有名なリリーだが、アルツハイマー型認知症薬の開発も約30年にわたって続け、グループとして多くの候補物資を擁する。「人に使って効き目や安全性を確かめる臨床試験(治験)を世界に先駆けて日本で進め、いち早く患者さんに新薬を届けたい」。治験の中でも、新たな化合物を初めて人に投与する「ファースト・イン・ヒューマン」と呼ばれる工程ができる態勢づくりに注力した。

 舞台に選んだのは、神戸・ポートアイランドの先端医療センター病院(現中央市民病院)。アルツハイマー型の原因物質がどれほど脳に蓄積しているかは陽電子放射断層撮影(PET)で確かめるが、機器や診断薬を使いこなせる人材がそろっていたからだ。

 実際の投与にこぎつけたのは2016年春。副作用が起きた場合の備えなど数百に上る条件を満たすため、着手から2年をかけた。現在も、当初とは異なる候補物質に開発の照準を切り替え、治験を進めている。

 神戸大で学んだ後、「多様な環境で自らを試したい」と大手日用品メーカー、プロクター&ギャンブル(P&G)の米国本社に飛び込んだ経験が原点だ。現在、新薬開発に向けて日本に投資を呼び込もうと、リリーの米国本社と掛け合うことも多いが、「若き日に知らず知らず身に付けた交渉の流儀が役立っているかも」と笑う。

 「医薬品業界における成否は、その企業の開発力に懸かっている」。部下たちを鼓舞しながら、画期的な新薬を1日も早く日本の患者に届けようと汗を流す。(長尾亮太)

【メモ】滋賀県長浜市で酒造会社の長男として生まれた。神戸大理学部を卒業後、同大大学院で理学博士号を取得。大型バイクが19歳からの趣味。乗るだけでなく、ネット競売で購入した部品で製作も楽しむ。妻と子ども4人の多くも医療分野に携わる。神戸市東灘区在住。