ひょうご経済プラスTOP 経済 取引1日6千台 巨大中古車オークション会場に“潜入”

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取引1日6千台 巨大中古車オークション会場に“潜入”

2018.12.09
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車体や価格などを映し出す多数のモニターが並ぶオークション会場=神戸市中央区小野浜町(撮影・中西大二)★画像の一部を修正しています

車体や価格などを映し出す多数のモニターが並ぶオークション会場=神戸市中央区小野浜町(撮影・中西大二)★画像の一部を修正しています

毎週土曜にオークションが開かれるHAA神戸=神戸市中央区小野浜町

毎週土曜にオークションが開かれるHAA神戸=神戸市中央区小野浜町

礼拝室で祈りをささげるパキスタン人男性=神戸市中央区港島町1

礼拝室で祈りをささげるパキスタン人男性=神戸市中央区港島町1

 真新しいベンツもあれば、レトロすぎるスバル360もある。街で振り向くスーパーカーも、見慣れた国産のワゴンや軽も、等しく同じ場に並ぶ。ここは、神戸の湾岸にある西日本最大の中古車オークション会場「HAA神戸」だ。フリマアプリの登場やブランド買い取り店の拡大で、今や生活の一部となった中古品売買。しかし、その価格はどのように決まるのか。普段は会員業者しか立ち入ることのできないHAA神戸の内部に、取材班が入った。(前川茂之、土井秀人、奥平裕佑)

 そこは、静かな戦場だった。

 薄暗く、巨大なホールに944台のモニターが光り、席に座ったバイヤーたちが真剣な表情で画面を見つめる。AからHまでの8レーンで8台の車が同時に競りにかけられ、取引の開始を告げるアナウンスと、落札を知らせる電子音だけが淡々と場内に響く。

 スタート価格が数百万円の高級車も数万円の軽自動車も条件は同じ。手元のボタンを押すごとに5千円アップし、一番の高値を付けた人が落札する。その間、わずか十数秒。長くても1分ほどで勝負は決まる。

 「競りはどつき合いや。欲しい車があるときは、相手が戦意をなくすまでボタンを押しまくる。短期決戦やから、瞬間の判断が重要になる」。姫路市の中古車販売会社の経営者男性(55)が熱く語る。

 例えば、470万円でスタートしたベンツ。数秒で500万円まで上がり、最低落札価格を超えたことが画面に表示される。なおも数人が競り続け、最終的には560万円で落札された。

     ◇     ◇

 1999年に開業したHAA神戸の敷地は約16万8千平方メートル。そこに、競りにかけられるすべての車が並ぶ。取材の当日は、計5560台が出品された。「神戸の土地柄もあり、輸入車が多く全体の2割を占める」とHAA神戸の丸尾直輝さん(44)。オークションは毎週土曜日に開かれ、中古車販売店のバイヤーや輸出業者ら約1300人が全国から訪れる。

 入札はインターネットでも可能で、今や成約件数の4割超に上る。その際の判断基準となるのが、オークション会場が一台一台の車の状態を検査して決める評価だ。HAA神戸は10段階で評価しており、この信頼性がオークション会場の“生命線”となる。

 それでも多くのバイヤーが足を運ぶのは、現物を見るためだ。愛知県から毎週、神戸のオークションに参加している男性(34)は、落札した車を整備して、地元のオークション会場に出品する。「車の状態を見て、整備すればいくらで売れるかを計算する。そこから落札料や愛知までの陸送費などを差し引いて、勝負する価格を決めているんです」

 メリットはそれだけではない。競りの場は重要な情報収集の場でもある。同業者との会話により、“相場観”が磨かれる。

 だが、それを覆されることもある。

 経営者男性は言う。「今の日本の中古車相場を引っ張っているのは、海外へ輸出する外国人バイヤー。だから、トランプ(米大統領)の一言で、落札価格が大きく動くこともある」

■祈り、のち、ビジネス… 世界を席巻 パキスタン人

 中古車オークション会場は外国人が驚くほど多い。中でも、早くから日本車の輸出を手掛けてきたパキスタン人は、中古車市場の“主役”といわれるほどだ。中東や南米など世界中にネットワークを築き、スマホを片手に全国を買い付けに飛び回る。

 オークション会場には、イスラム教徒向けの礼拝室もある。豚肉などを使わない「ハラル」メニューを提供するところも少なくない。

 「礼拝室ができるまでは、車の中にじゅうたんを敷いて祈っていたんだ」と、神戸・ポートアイランドの別のオークション会場「USS神戸」で出会った来日10年目のシャキルさん(45)=大阪府岬町。入念に手、足、顔を清めると、床にひざまずき、繰り返しぬかずく。頭を上げると、こちらを振り向き、にっと白い歯を見せた。「さあ、商売だ。日本車は頑丈だからよく売れるんだよ」

 財務省貿易統計によると、2017年の中古乗用車の輸出先は、右ハンドル仕様のニュージーランドが1位。続くアラブ首長国連邦、チリからは、中東やアフリカ、南米各国にも搬出される。神戸港からは11万7306台の中古車が海外へと輸出され、全国4位の規模だ。

 さまざまな国の言葉が飛び交うミナト町・神戸は、世界とつながっていると実感する。