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医療産業びと(5)手術支援ロボット「メディカロイド」浅野薫さん(60)

2018.12.22
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「メディカロイドには川重時代の同期が数人おり、ずっと一つの会社だったよう」と話すメディカロイド副社長の浅野薫さん=神戸市西区高塚台4

「メディカロイドには川重時代の同期が数人おり、ずっと一つの会社だったよう」と話すメディカロイド副社長の浅野薫さん=神戸市西区高塚台4

 「技術革新が目まぐるしいので新たな分野へ参入しにくい」「でも、両社が強みを持ち寄ればきっと勝てる」

 2012年の正月。神戸市西区にある臨床検査機器大手、シスメックスの拠点で、同社幹部の浅野薫さん(60)と川崎重工業幹部の橋本康彦さん(61)は、20代の若者のように目を輝かせて語り合った。

 浅野さんは大学を出て4年半、川重で産業用ロボットの開発に従事。橋本さんとは、製品を売り込むため2人で米国の自動車工場に乗り込み、2カ月にわたり寝食を共にした仲だ。気心の知れた元同僚らが歳月を経て、再び一つの事業に挑もうとしていた。

 当時、神戸商工会議所の正副会頭を務めて信頼関係があった両社のトップ同士も意気投合。医療用ロボットメーカーのメディカロイドが13年、神戸・ポートアイランドに誕生した。社長に橋本さん、副社長には浅野さんが就いた。

 現在、主力製品と目する手術支援ロボットは、19年度の発売に向け開発が大詰めを迎える。医師によって遠隔操作されるロボットが担うのは、患者の胸腹部に穴を開けて医療用のカメラ、器具を挿入して行う内視鏡手術だ。縫い合わせ作業などで医師に高い技術が求められる弱点を、自在に操りやすいロボットアームで克服する。

 保険適用される手術が増え、ロボット需要が拡大する中、先行する米国製「ダビンチ」の市場独占を切り崩せるかが焦点となる。

 シスメックスが掲げる「顧客に届けるのは物ではなく、価値だ」との理念をメディカロイドに持ち込もうと、浅野さんは腐心してきた。ITネットワークを用いて手術現場のトラブルを解決する▽手術全体の工程を効率化する▽熟練医師の技を記録し若手の訓練に生かす-などのアイデアを製品に反映させる計画だ。

 「医療機器を神戸から世界へ届けたい」。20年前に描かれた「医療産業都市」構想の原点に立ち返るプロジェクトが、いま花開こうとしている。(長尾亮太)

【メモ】川重を退職した浅野さんは1987年、当時はまだ事業規模の小さかった東亞医用電子(現シスメックス)へ移った。陶磁器を愛し、とりわけ土の風合い漂う備前焼を好む。息子2人は独立し、妻とは月1回、劇場で宝塚歌劇を楽しむ。神戸市西区在住。