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30日にTPP発効 揺れる生産地、募る危機感

2018.12.30
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国産牛の消費量減少を気に掛ける村田哲哉社長=姫路市夢前町前之庄、村田牧場

国産牛の消費量減少を気に掛ける村田哲哉社長=姫路市夢前町前之庄、村田牧場

つるして乾燥中のなめし革が並ぶ工場=姫路市東郷町(撮影・山崎 竜)

つるして乾燥中のなめし革が並ぶ工場=姫路市東郷町(撮影・山崎 竜)

 11カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)の発効を受け、国内有数の産地である兵庫県の肉牛、皮革の生産者らが危機感を募らせている。関税の引き下げや撤廃で、海外の安い商品が増え、国産品には逆風が予想される。海外産品との差別化やブランド力を高めて輸出を模索するなどの動きも始まっており、業界関係者は「消費者に品質の良さをアピールしたい」と表情を引き締めている。

 「影響がないとは言い切れない」

 厳しい見方を示すのは、神戸牛のブランドを管理する神戸肉流通推進協議会の谷元哲則事務局長(57)。牛肉の関税はTPP発効前が38・5%で、発効後に27・5%に下がる。その後も毎年引き下げられ、2033年に9%になる。33年の兵庫県内牛肉生産額は13年比で最大1・5%、約3億円減ると県は試算するが、高級牛肉の神戸牛、但馬牛への影響はないとする。ただ、それも「信用を守れれば」(谷元氏)との条件が付き、輸出戦略などの強化をもくろむ。

 打撃を受けると想定されるのは、スーパーの特売や外食、加工用の「国産牛」。乳牛と、乳牛と和牛を掛け合わせた交雑種だ。肉ブームの影響で、乳牛の肉の店頭価格は5年前と比べ2割超上昇し、安い輸入肉が増えるとシェアを奪われるとの不安が広がる。

 肉牛約千頭を育てる姫路市の村田牧場。薄利多売の肉用乳牛を専門としていたが、3年前から利幅のある交雑種への転換を図ってきた。今や交雑種が9割。村田哲哉社長(49)は「味には自信がある。輸入肉が安くなっても、日本人好みの国産牛ブランドをつくり、消費者の国産離れを食い止めたい」と話す。

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 なめし革の国内最大産地の姫路・たつの地区。中小零細が多い皮革業界は最高30%の関税の保護がなくなり、安価な皮革や履物との競合を強いられる。だが、タンナー(製革業者)でつくる日本タンナーズ協会(姫路市)の喜田邦男会長(74)は「環境はもともと厳しい。(TPPによる)影響は限定的」と分析する。

 すでに経済連携協定(EPA)を結ぶマレーシアなどから無税の皮革や革靴が流入。対抗措置として、国内の皮革製品メーカーは人件費の安い海外生産への切り替えを加速している。

 TPP以上に脅威とみるのは、来年2月に発効する欧州連合(EU)とのEPA。イタリアなどの有名ブランド品の輸入が増える可能性があるからだ。

 アジア各国からの低価格品と欧州の高級品。二正面作戦を迫られる事態に。皮革メーカー山陽(姫路市)は、タイや中国人の留学生を雇って、アジア市場への販路を探る。川見斉社長(66)は「品質の安定した日本製皮革の評価は高い。海外に打って出る」と語気を強める。

 日本タンナーズ協会は日本製皮革のブランド化を目指し、一定条件を満たした製品に付ける共通タグを作製して商標登録をした。喜田会長は言う。「各メーカーが手を取り合ってジャパンレザーのブランド力を高めなければ。残された時間は少ない」(山路 進、三島大一郎)