ひょうご経済プラスTOP 経済 医療産業びと<6>ドイツ系製薬会社「日本ベーリンガーインゲルハイム」鈴木忍さん(46)

経済

医療産業びと<6>ドイツ系製薬会社「日本ベーリンガーインゲルハイム」鈴木忍さん(46)

2019.03.16
  • 印刷
創薬で外部機関と連携する鈴木忍さん。勤務先の敷地内には勤勉の象徴である二宮金次郎の像が立つ=神戸市中央区港島南町6

創薬で外部機関と連携する鈴木忍さん。勤務先の敷地内には勤勉の象徴である二宮金次郎の像が立つ=神戸市中央区港島南町6

 国内の大学や研究機関に眠る新薬のシーズ(種)を見いだし、本国などのグループ拠点につなぐ役割を担う。「効き目がある一方で副作用はない薬をつくり出したい」。そんな思いで、日々の仕事に向き合う。

 薬にこの二つの性格を併せ持たせるには「体内のどんなタンパク質を標的に定め、そこへ働きかける候補物質をどのように絞り込むか。その最初の工程が肝心」と力説する。

 業界にとって新薬開発が難しい時代を迎える中、外部の知恵をいかに取り込めるかが製薬会社の腕の見せどころ。「ビジネスとアカデミア(研究機関)の間の壁を乗り越え、研究者と肌感覚で理解し合っている」と、同僚の信頼は厚い。

 生粋の神戸っ子である。祖父が「神戸洋家具」の職人で、その仕事ぶりを眺めながら育った。「使い心地をとことん追求する利用者目線のものづくりは、使う人に安心感を届けたい私のお手本」という。家具作りの際には、ひび割れを防ぐため材木をしっかり乾燥させる必要がある。「最初が大切なのは同じ」と、薬の開発と重ね合わせる。

 祖父の作業風景と並んで小学生時代に好きだったのが読書で、当時からの愛読書は米国の西部開拓を描いた「大草原の小さな家」。「生涯を通じてパイオニア(開拓者)であり続けようとする主人公の精神に魅せられた」

 米国のベンチャーや大学で研究に打ち込んだ後、30代に入って製薬業界の門をたたいた。「好奇心を原動力に学究を極めるアカデミアと、十数年先の市場動向に思いをはせながら開発を進めるビジネスとでは見えている景色が違う」と、両者の橋渡しを任じる。

 パイオニア精神の持ち主はこの春、大学に籍を移して担い手育成に乗り出すことになった。ただ、立場は変わっても目指すところは一つという。「日本から薬を生み出し、世界へ届けたい」と力を込める。(長尾亮太)

【メモ】ベーリンガーインゲルハイムは1885年にドイツで創業。2008年、神戸・ポートアイランドに設けた「神戸医薬研究所」では創薬シーズ探しに加え、錠剤やカプセルなど薬剤の形態、体内における薬の巡り方に関する研究も進めている。