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神戸空港、規制緩和の先に(1)パリ会談 関西浮揚へ地域対立に風穴

2019.07.08
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記者会見する(左から)久元喜造神戸市長、三輪徳泰フジドリームエアラインズ社長ら=5日午後、同市役所(撮影・秋山亮太)

記者会見する(左から)久元喜造神戸市長、三輪徳泰フジドリームエアラインズ社長ら=5日午後、同市役所(撮影・秋山亮太)

 「憧れの神戸空港に就航できること、社員一同、大変喜んでいます」

 7月5日夕。神戸市役所で記者会見に臨んだ新興航空会社フジドリームエアラインズ(静岡市)社長の三輪徳泰は、興奮気味に語った。5月の「関西3空港懇談会」で決まった神戸空港の運用規制の緩和を利用し、10月から定期便の新規就航を表明したのだ。

 隣席の神戸市長久元喜造は、神戸沖に国際空港を建設する構想が1973年の市長選でついえた経緯などを振り返り、「この日を迎えられてうれしい」と語った。「神戸空港のさらなる活用を歓迎したい」。関西経済連合会会長の松本正義も大阪でこの一報に接し、感慨を深めた。3空港懇の座長を務め、規制緩和を主導した人物である。

   ◇   ◇

 昨年11月21日(現地時間)の深夜。パリ中心部のホテルの一室で松本は大阪府知事(当時)の松井一郎と膝をつき合わせた。

 2025年万博の開催地を決める博覧会国際事務局(BIE)総会を翌々日に控え、各国と激しい誘致競争を繰り広げる最中だったが、松本には松井との時間を確保しやすい滞仏中に、どうしても腹を割って話しておきたいことがあった。

 「関西全体が発展するため、(世界的に膨らむ)航空需要をしっかりと受け止めたい。神戸空港は規制緩和すべきだ」。松本が切り出すと、万博とカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を進め、空港の大切さを感じていた松井も力強く応じた。

 「南は任せてほしい」

 南とは、関西空港のお膝元である大阪・泉州を指す。関空から航空需要を損ないかねない神戸の規制緩和を警戒する地元自治体。松本の主張に共感した松井は、説得に乗り出すことを約束した。万博の開催地を決める舞台裏で、積年の懸案である空港問題は動きだした、かに思われた。

 「パリ会談」から約1カ月後の12月24日。大阪(伊丹)を含む3空港の役割分担を話し合う3空港懇が8年ぶりに開かれた。兵庫県知事の井戸敏三が伊丹、神戸の規制緩和を訴えると、隣にいた和歌山県知事の仁坂吉伸が「傷ついた関空のハブ(拠点)機能を元に戻してほしい」と反論した。国内線で関空よりも伊丹を優先する航空大手2社をやり玉に挙げ、伊丹、神戸の規制緩和に難色を示した。

 当初はこの会合で、神戸の規制緩和が合意されるとの見方もあった。すでに関西エアポートの一体運営が実現し、「神戸の規制に自治体が口を出す筋合いでない」というのが理由。だが、またも地域の利害対立が再燃したのである。

 松本は年明け後、両知事サイドへの根回しに走り回った。騒音問題を抱える伊丹の運用は現状通りで、神戸の規制緩和は小幅にとどまることを井戸に受け入れさせた。一方、仁坂には、関空が将来にわたり基幹空港として揺るぎない存在であると説き、神戸の規制緩和に理解を求めた。

 5月11日。3空港懇の再開2回目の会合で、神戸の発着枠と運用時間の拡充で合意し、万博がある25年ごろまでの国際線就航の検討も盛り込まれた。終了後の会見で松本は「ブレークスルー(膠着(こうちゃく)状態を突破)できた」と強調。国際化の「検討」の意味を問われ、こう言い切った。「ただの検討で取りまとめ文書に書けませんわ」。先送りを意味する役所言葉でなく実現を前提にした検討だと力説した。まずは発着枠の規制緩和が8月1日に実現する。=敬称略=(長尾亮太)

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 規制緩和を手にした神戸空港。その将来像を探る。