ひょうご経済プラスTOP 経済 中山間地の農業、活性化を 国家戦略特区も企業参入に陰り

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中山間地の農業、活性化を 国家戦略特区も企業参入に陰り

2019.07.20
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耕作に不利な谷あいに連なる田んぼ。中山間地農業の振興策を求める声は多い=養父市能座

耕作に不利な谷あいに連なる田んぼ。中山間地農業の振興策を求める声は多い=養父市能座

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 担い手不足が叫ばれて久しい農業。農地を集約して大規模農家に貸し出す制度に加え、企業の農地取得を認める特例を国は実施しているが、抜本的な解決策にはなっていない。とりわけ中山間地では離農者が後を絶たず、地域そのものの存続も危ぶまれる。農業者らは「将来も安心できる施策を」と参院選の論戦に関心を寄せる。

 「何とか田畑が守れた」。兵庫県上郡町奥の自治会長、橿林(かしばやし)喜代和さん(70)は胸をなで下ろす。

 住民約120人の半数が65歳を超え、耕作が大きな負担になっていた。検討した結果、県の外郭団体を通じて地区の農地23ヘクタールを地元の大規模農家らに貸し出し、今春からコメ、麦、大豆の耕作を委ねた。住民は水路や獣害防止柵の修繕、除草などを担う。

 うち19ヘクタールの農作業を請け負う大規模農家の男性(47)は「生産に集中できれば、今後も担い手が見つかるはず」と話す。

 ただ、この貸借制度は10年契約。農地を貸し出した住民側には、作物の売り上げ収入は入らない。男性は「すでに地区を出た地主もいる。10年後はどうなっているか」と目を伏せた。

■国家戦略特区の養父 企業参入勢いに陰り

 谷あいの急傾斜地に棚田が広がる養父市能座(のうざ)。地元住民と三木市の建材販売会社が共同で設立したアムナック(養父市)が2016年から酒米山田錦を栽培。国家戦略特区の規制緩和を使って農地も取得した。県内外の酒造会社に納めるとともに、純米酒を自社ブランドで台湾に輸出。18年度は売上高1600万円を計上し、黒字化を達成した。

 春からは国全額補助で「スマート農業」を始めた。人工衛星や人工知能(AI)などを駆使した自動運転トラクターなどを導入。少人数で農地を担う方法を探る。

 “攻めの農業”の優等生的な存在となったが、かつては、休耕田が地区内の半分以上を占めるまでだった。当時、農会長だった男性(70)は「放置するしかないと諦めかけていた」という。

 養父市にはこれまで、オリックスやクボタなどの大手を含む12社が進出。全国的な脚光を浴びた。しかし、この3年の企業参入は1社にとどまり、勢いに陰りが見える。

 男性は「進出してくれた企業はありがたい存在だが、担い手となる住民を連れてきてくれたわけではない。地域が維持できるような政策を聞かせてほしい」と訴える。(山路 進)