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スポ×ビズ新時代(2)スポーツ×バーチャル

2019.08.15
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陸上競技用車いす「レーサー」を疑似体験できるサイバーウィル。バーチャル技術で、障害者スポーツのイメージ刷新を目指す=東京都墨田区・東京ソラマチ

陸上競技用車いす「レーサー」を疑似体験できるサイバーウィル。バーチャル技術で、障害者スポーツのイメージ刷新を目指す=東京都墨田区・東京ソラマチ

ゲームと温泉を武器に、若者を呼び込もうと動き始めた有馬温泉のeスポーツチーム。観戦バーを拠点に、全国の温泉地との連携にも取り組む=神戸市北区、バル・デ・ゴザ-ル

ゲームと温泉を武器に、若者を呼び込もうと動き始めた有馬温泉のeスポーツチーム。観戦バーを拠点に、全国の温泉地との連携にも取り組む=神戸市北区、バル・デ・ゴザ-ル

 3輪型のマシンが、バーチャル(仮想)空間の東京都心を疾走する。蛍光色のラインが輝く車体は、SF世界の乗り物のよう。VR(仮想現実)ゴーグルを装着したプレーヤーが、車輪に見立てた左右の円盤を操作してタイムを競う。

 「レーサー」と呼ばれる陸上競技用車いすのレースを疑似体験できる「サイバーウィル」。ITベンチャーのワントゥーテン(京都市下京区)が2017年に開発した。全国のイベントに引っ張りだこで、体験者は1万人を超えた。

 空気抵抗を抑え、極限まで軽量化したトップ選手のレーサーは、時速50キロ以上に達する。問題は、その迫力をいかに伝えるかだった。「似て非なるものであれば、単なるゲームで終わる。リアリティーを徹底的に求めた」。社長の澤邊(さわべ)芳明(45)は明かす。

 今月末にお披露目する最新のマシンは、車いすの専門メーカーが製作。走行するサイバー都市は、東京のビル群や施設を独自技術で計測し、再現した。上り坂を進む場合に重たくなる負荷機能も検討中という。

 澤邊は大学時代のバイク事故で、両手脚が動かない。車いすの企業トップとして挑んだのが、障害者スポーツのイメージを180度変えることだった。サイバーウィルの発表後、車いすバスケットボールや車いすテニスの選手などからマシン製作希望が相次ぐ。澤邊は「車いすを日常風景に溶け込ませたい。テクノロジーがそれを可能にする」と確信する。

 澤邊が見据えるのは、VRやIoT(モノのインターネット)を駆使し、体を動かしながらプレーする新たなコンテンツ市場の創造だ。「いわば『日本版eスポーツ』。身体機能や場所にとらわれることなく、世界中の人が対戦を楽しめる日が来る」と未来を描く。

   ◇  ◇

 バーチャルとリアル(現実)を連動させ、新たなスポーツエンターテインメントの潮流を生み出す。こうした芽は、神戸市の有馬温泉でも育ちつつある。

 温泉街の中心で昨年5月に開店した関西初のeスポーツ観戦バー「バル・デ・ゴザール」。大型スクリーンにサッカーや格闘技の対戦ゲームが映し出され、飲食しながら観戦できる。

 なぜ、温泉とゲームなのか-。「画面の前で黙々と技術を磨くゲーマーたちのストレスは大きい。温泉はその疲れを癒やせる」。バーを仕掛けた老舗旅館・御所坊(神戸市北区)専務の金井庸泰(36)は話す。

 開店後にプロのゲーマーや地元経営者らでeスポーツのチームを結成。バーを会場に「湯桶(ゆおけ)杯」と銘打ったサッカーゲーム大会を昨年11月に企画した。ただ、過熱するeスポーツの人気を支える賞金は無い。優勝者には温泉施設のチケットとなる特別な湯桶を贈り、持参すれば1年間無料で入湯できるようにした。

 第2回大会は今月末、北海道の岩内温泉で開かれる。来年には群馬県の名湯・草津温泉でも計画中だ。「ゲーマーが温泉地に集えば、ファンも訪れ、魅力が拡散される。さらに若者が働き手として定着すれば、新たな文化が根付く」。金井もまた、勃興するeスポーツに自らの夢を託す。=敬称略=(京都新聞・柿木拓洋)