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スポ×ビズ新時代(3)スポーツ×エナジー

2019.08.16
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日頃から「Mag-on」を使用するASハリマアルビオンの選手ら=姫路市香寺町行重

日頃から「Mag-on」を使用するASハリマアルビオンの選手ら=姫路市香寺町行重

自身が発案した「anpower」を披露する鼓月の中西英貴社長=京都市伏見区、鼓月伏見店

自身が発案した「anpower」を披露する鼓月の中西英貴社長=京都市伏見区、鼓月伏見店

 自転車に乗りながら、ポケットの携帯型ようかんを片手で取り出し、包装材の封をかみ切る。口に入れるとほんのり塩辛い。京菓子を製造販売する「鼓月」(京都市伏見区)が6月に発売した「anpower(アンパワー)」は、トライアスロン競技者のために生まれた栄養補給食だ。

 発案したのはトライアスロンが趣味の社長、中西英貴(47)。おいしい補給食を探したが口に合うものがなかった。栄養面で小型のようかんを食べている競技者がいることなどから、あんを自社で作る強みを生かして自ら作ろうと決意。2016年、社内の職人らと開発に取り掛かった。

 小豆は上生菓子と同じ上質品を使用。疲労を防ぐ抗酸化作用を持つポリフェノールを配合すると苦みが出た。必須アミノ酸や塩分を加えて試作を重ね、小豆と塩の絶妙なバランスで苦みを抑えることに成功した。競技仲間に試作品を配ると「これはおいしい」と大好評。商品化を決断した。

 包装にも手間をかけた。自転車に乗りながら食べることを想定し、片手で取り出し歯で封を切れるよう厚みを調整するのに2年以上かかった。

 「自分が本当においしいと思ったものだから、自信を持って出せる」。中西の理想を形にしたアンパワーは、トライアスロンのみならず、ゴルフ、テニス、登山など多様なスポーツシーンで使われ始めている。

   ◇  ◇

 工業用マグネシウムを製造するタテホ化学工業(東京)も、トライアスロン競技者向け補給食に参入した“異業種”組だ。兵庫県内にある同社工場で生産する顆粒(かりゅう)サプリ「Mag-on(マグオン)」は、人気商品に育ってきた。

 同社は1966年、塩業が盛んだった赤穂市で設立。工業用マグネシウムの生産は、海水から塩を取った後に残るにがりの再利用から生まれた事業だ。専門メーカーとして半世紀培った技術を基に、2012年にサプリメント分野に進出した。

 マグネシウムは人体に必須のミネラルの一種。長時間のレース後半に発汗で体内から失われると、足つりなどの筋けいれんが起こりやすくなる。マグオンは体内で素早く溶け、効果的に吸収できる。独自開発した水溶性マグネシウムの力といい、担当者は「他には負けません」と胸を張る。

 14年に誕生したマグオン。その2年前に出した粉末状の栄養機能食品が「就寝中に足がつらなくなった」と評判になり、東京のトライアスロン関連企業から「足つりと闘う競技者にぴったり」と販売の申し出を受けたのがきっかけだった。

 近年発売したジェルタイプは、20年東京五輪出場を目指す有力選手も愛用する。昨年には、姫路市を拠点にする女子サッカーなでしこリーグ2部のASハリマアルビオンと、京都大アメリカンフットボール部が採用するなど広がりを見せる。

 スポーツの競技者や愛好家の体とパフォーマンスを支える補給食。京都、兵庫で磨かれた技術が生きる。=敬称略=(中村有沙)