ひょうご経済プラスTOP 経済 アコヤガイが謎の大量死 世界的な真珠の集散地・神戸に不安広がる

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アコヤガイが謎の大量死 世界的な真珠の集散地・神戸に不安広がる

2019.10.26
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大量死の被害が出ているアコヤガイ=8月、愛媛県愛南町

大量死の被害が出ているアコヤガイ=8月、愛媛県愛南町

神戸で行われている真珠の選別・加工作業。アコヤガイの大量死で神戸の真珠業界にも影響する恐れが出ている=神戸市内

神戸で行われている真珠の選別・加工作業。アコヤガイの大量死で神戸の真珠業界にも影響する恐れが出ている=神戸市内

 真珠の養殖に使うアコヤガイが今夏、大量死し、世界的な真珠の集散地である神戸の加工・卸会社に不安が広がっている。流通量が減少すれば、価格上昇や販売機会のロスが生じ影響は計り知れない。大量死の原因は判明しておらず、11月の採取シーズン入りを前に、業界は警戒を強めている。(中務庸子)

 アコヤガイは、人工交配などで育てた稚貝を海に入れ、1年半ほど養殖し、母貝に育てる。その後、養殖業者らが母貝に「核」と呼ばれる貝殻片を入れてさらに1年半ほど海中で育て、11月~翌年2月ごろに真珠を採取する。

 アコヤガイの大量死は、真珠の三大産地である愛媛、長崎、三重の各県で相次いで見つかった。最大産地の愛媛県では8月初めごろから被害が表面化。大半の養殖業者で養殖中の貝の5~9割が被害に遭ったという。餌の減少や海水温の低下が原因の可能性があるが、特定はできていない。

 関係者によると、今季に水揚げされる真珠の被害は軽微とみられるが、来季用に核を入れる母貝や再来季用の稚貝が大量死しており、来季以降の水揚げが激減する恐れがあるという。

 「今季の原珠は昨季より10~15%は値上がりするだろう。中小企業にはこたえる」。神戸市中央区の真珠加工業者の男性は頭を抱える。真珠の水揚げ量は養殖業者の高齢化などを背景に、この15年で30%減っており、昨季も約15%値上がり。「急激な価格転嫁は難しい。自社で吸収するしかない」とこぼす。

 別の神戸の業者は「値上がりした真珠を仕入れる経営体力はないので、在庫でしのぐしかない。対策が取られるまで安心できない」と嘆く。

 日本真珠輸出組合(神戸市中央区)は、主要な販売先の中国では価格を引き上げることができるとみるが、「水揚げがなくなれば機会ロスは免れない」という。

 一方、神戸の海でもアコヤガイの大量死が起こっている。2年前から実験的に育てているすまうら水産有限責任事業組合(神戸市須磨区)では8月中旬、ほぼ全ての貝が死んだ。関係者は「数年前から船底に付くフジツボが減るなど海の様子が変わった」と訴える。

 業界大手の大月真珠(神戸市中央区)は毎年、同市兵庫区の兵庫運河で小学生の環境学習として養殖を手掛けるが、ここでも今夏は全滅。担当者は「自然相手で予測はできないが、早く被害が落ち着いてほしい」と話している。

【神戸の真珠産業】三重、愛媛、長崎などの真珠養殖場と近く、世界的な貿易港があるため、大正期から加工業が発達した。関連業者は220社に上り、大きさや形、色などで選別し、ネックレス用に穴を開けるなどした半製品や、指輪などの完成品を宝飾業者などに卸している。六甲山の緑に反射する自然光が選別に適しているといわれ、世界で流通する海水産真珠の70%が神戸に集まる。このうち2割が国内で消費され、8割が輸出されている。