ひょうご経済プラスTOP 経済 【ベンチャーを追う】「現場熟知」強みに成長 84兆円の市場に臨む

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【ベンチャーを追う】「現場熟知」強みに成長 84兆円の市場に臨む

2019.11.29
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テッククランチ東京2018のスタートアップバトルで、富士通賞を受けたクラセルの川原社長=東京都渋谷区(クラセル提供)

テッククランチ東京2018のスタートアップバトルで、富士通賞を受けたクラセルの川原社長=東京都渋谷区(クラセル提供)

 神戸、兵庫を代表するスタートアップ企業として真っ先に名前が挙がるのが、医療機関と介護施設のマッチングサービスを展開する「KURASERU(クラセル)」(神戸市東灘区)だ。創業わずか2年だが現場を熟知する強みを武器に、成長への階段を急ピッチで駆け上がっている。(篠原佳也)

 創業者社長の川原大樹(32)の毎日は忙しい。神戸、東京、中国地方…、事業本格化のための資金調達に向け、全国を回り、投資家らと打ち合わせを重ねる。

 2017年10月に創業し、12月には神戸市が主催する「神戸スタートアップオフィス」の一社に採択。18年10月に大阪市主催のシードアクセラレーション(事業加速)プログラムで大賞とオーディエンス賞に輝き、翌月、スタートアップの祭典「テッククランチ東京」で富士通賞を受けた。ビジネス雑誌の18年「日本の100ベンチャー」にも、兵庫勢2社の1社として選出された。

 同社は、在宅療養の困難な患者が退院する際、オンラインで介護施設を仲介するサービスを提供する。患者側が移転日や料金、必要な措置などの項目を入れると、希望に沿った施設が提示される。病院側は従来、メールや電話などで一軒一軒移転先を当たっていたが、このサービスで作業時間が10分の1になる。サイトを通じ施設間で患者情報も共有できる。介護施設と病院で勤務経験がある川原が、現場の課題を解決しようと描いたビジネスだ。

 起業への道は、綿密に描かれた。実家は数百人規模の警備会社を営み、幼いころから経営が頭にあった。高知の名門高校で甲子園を目指したが、卒業後はきっぱりあきらめ、大学で経営学を専攻。卒業後「課題が大きい業界の現場を知りたい」と介護業界の門をたたく。病院でも医療ソーシャルワーカーとして働き、ビジネスの種を探した。

 当初は介護施設から紹介料を得るビジネスモデルだったが、18年6月、米シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルより5千万円の資金調達を受けると、無料サービスに転換。プラットフォームを握るため、利用者拡大に注力した。

 19年3月には、さらに1億3千万円の資金を調達。同時に、神戸市北区の医療機関と連携し、川原の人脈中心だった「点」の利用者を「面」に拡大した。利用施設は明石市や千葉県などにも広がり、現在は高齢者4千人がサービスを使う。

 スマートフォンやタブレット端末での利用も可能にし、企業向けだけでなく、消費者向けサービスも視野に入れる。高齢者が日常使うサービスを提供することで「消費者向けのマーケットプレイスになる」と川原。この国内市場は84兆円。「市場の1割を取れば、8兆4千億円の売り上げを見込める」と気炎を上げる。

 古里神戸から世界へ。「誰もが暮らしたい場所で暮らせる(クラセル)世の中にしたい」という川原の挑戦は始まったばかりだ。=敬称略=