ひょうご経済プラスTOP 経済 震災生き抜いた熟成酒 200本を限定販売 沢の鶴

経済

震災生き抜いた熟成酒 200本を限定販売 沢の鶴

2020.01.18
  • 印刷
「現外」を手にする沢の鶴の西向賞雄取締役=神戸市灘区大石南町1

「現外」を手にする沢の鶴の西向賞雄取締役=神戸市灘区大石南町1

沢の鶴の熟成酒「現外」(クリア提供)

沢の鶴の熟成酒「現外」(クリア提供)

 阪神・淡路大震災で被災した酒造会社の沢の鶴(神戸市灘区)。醸造再開のめども立たない状況で蔵人や社員が見つけたのは、損傷の大きかった蔵の中で無事に残っていた「酒母(しゅぼ)」だった。震災を乗り越えた酒母を搾り、長年熟成した清酒の瓶詰め作業が17日、同社であった。(中村有沙、塩津あかね)

 25年前のあの日の朝、「ズドーン」という音で目が覚めたという製造部次長の今野浩之さん(52)。発生時は同社敷地内の社員寮にいて、別室の同僚や酒蔵で寝泊まりしていた蔵人の安否を確かめ合った。

 社内の状況を確認したところ、七つあった全ての木造蔵と資料館、れんが造りの貯蔵庫が倒壊。下敷きとなった守衛1人と蔵人2人が犠牲になった。同じ寮に住んでいた牧野秀樹さん(50)は「亡くなった蔵人に指導してもらった。現実を見るのが怖くて助けにいけなかった」と振り返る。

 被害が徐々に明らかになる中で、二つあった鉄筋コンクリート造りの蔵は倒壊を免れた。それでも、タンクの破損や異物混入で、仕込んでいたもろみなどを廃棄しなければならず、酒造りの再開は見通せなかった。

 社員らが片付けをしていると、無事だったタンクで清酒のもとである酒母が見つかった。ただ、設備が十分でなく、水や蒸米などを加えて発酵させる工程に進められなかったため、全て省略して酒母の状態から搾り、保存した。

 当初は酸味が強く蔵出しできる代物でなかったが、2012年ごろから酸味がとれた。激動をくぐり抜けて琥珀色になった酒に、日本酒販売などを手掛けるクリア(東京)が着目。「日本酒の未来をつくる」との企業理念にも合うことから、熟成酒「現外(げんがい)」として昨年初めて販売した。今年はさらに穏やかな味わいに変化したという。同社の生駒龍史社長(33)は「25年の時が生み出した日本酒を、ぜひ兵庫県の人にも味わってほしい」。製造責任者の西向賞雄(にしむかいたかお)・沢の鶴取締役(54)は「できる限りのことを尽くして生まれた酒を、消費者に届けることができてうれしい」と話した。

 200本限定。クリアが運営する「SAKE100」の通販サイトで17日から本格販売。500ミリリットル瓶で16万5千円(送料別)。