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イカナゴの漁場改善へ「海底耕運」 明石と淡路の9漁協

2020.07.07
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海底耕運するために9漁協所属の漁船70隻余りが一斉出動した=5月9日(明石浦漁協提供)

海底耕運するために9漁協所属の漁船70隻余りが一斉出動した=5月9日(明石浦漁協提供)

海底を掘り起こす幅約2メートル、奥行き約1メートルの鉄製器具(明石浦漁協提供)

海底を掘り起こす幅約2メートル、奥行き約1メートルの鉄製器具(明石浦漁協提供)

 兵庫県内の瀬戸内海でイカナゴ漁の不漁が深刻化していることを受け、明石、淡路両市の9漁協が海の栄養回復対策に乗り出した。約70隻が淡路島北西沖に出動し、海中に垂らした鉄製の器具で海の底を掘り起こす「海底耕運」に当たった。多数の漁協が合同で行うケースは過去になく、漁師らは「海の異変に対する危機感を共有できた。今後もできることは何でもやる」と力を込めた。(山路 進)

 5月9日午前6時、明石市二見町の南約14キロ沖合。イカナゴの産卵場で「鹿ノ瀬」と呼ばれる浅瀬の海域に、明石浦、林崎(以上明石市)、育波浦、室津浦(同淡路市)など9漁協の70隻余りが集結した。全船が一斉に鉄製器具「耕耘桁(こううんげた)」を海に投入。深さ約20メートルの海底に沈めて約5時間引き回し、掘り起こした。

 海底耕運は、浅瀬で貝などの堆積物をかき混ぜて生物がすみやすくするほか、たまった窒素やリンなどの栄養塩を海に放出する効果がある。県内では2006年度から瀬戸内の各漁協が行う。

 今回参加した漁協の多くは、毎年2月下旬ごろに解禁されるイカナゴのシンコ(稚魚)漁を手掛ける。1万~3万トン台だった漁獲量は17年以降、千トン台に低迷。漁業者は翌年の親魚を残すため、1日の漁獲量が一定水準を下回れば、その年の漁を終える。だが漁獲回復の兆しは見えず、今年の漁期は大阪湾で実質2日間、播磨灘でも同5日間と過去最短を更新。漁獲量は147トン(速報値)と4年前の1・3%に落ち込んだ。

 「ここまでの不漁は考えもしなかった」。育波浦漁協の片山守組合長(57)は危機感を募らせる。3月に漁協幹部らが集まった会合で海底耕運を提案。異論は出ず、大船団での作業が決まった。

 耕運することで海の栄養塩濃度が上昇し、養殖ノリの色が回復する効果は確認されている。しかし、濃度の上昇は一時的で、イカナゴの資源量回復につながるかは未解明という。それでも、明石浦漁協の戎本裕明組合長(57)は「海の幸を守るため、皆で行動を起こしていきたい」と話した。

■栄養塩回復策制度化へ 環境省、今秋めどに案

 環境省は、瀬戸内海で「栄養塩」(窒素とリン)の濃度を管理するため、手順を制度化することを明らかにした。今秋までに制度案を中央環境審議会の小委員会に諮る方針。兵庫県は2019年度、全国に先駆けて海中の窒素とリンの濃度に下限値を設け、下水処理場の排水基準も見直した。県が先導してきた「豊かで美しい海」の回復策を、国レベルで推進する。

 瀬戸内海の環境保全を巡っては、15年改正の瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)の付則で、20年中に栄養塩管理の在り方を検討し、必要に応じて所要の措置をとると明記されていた。これを受け、環境相が19年6月、同審議会に具体策の検討を諮問していた。

 同審議会は今年3月の答申で、栄養塩の管理や事後評価などを水域ごとに行う必要性を明示。下水処理場などの水質評価についても検討の必要性を指摘した。

 同省は3月の同審議会小委員会で、今夏までに管理手順の制度案を示すと表明していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で作業が遅れ、制度案の提示は「今年秋にずれ込む」としている。